ラグビーワールドカップ釜石第2戦(ナミビア―カナダ)無念の中止〜台風影響 苦渋の決断、野田市長「命を守る教訓」発信


2019/10/21
復興釜石新聞アーカイブ #地域

豪雨で沢から押し出された土砂や流木で埋まった釜石鵜住居復興スタジアムの駐車場

豪雨で沢から押し出された土砂や流木で埋まった釜石鵜住居復興スタジアムの駐車場

 

 ラグビーワールドカップ(W杯)の釜石第2戦、ナミビア―カナダが中止となった。台風19号の影響で釜石市に大きな被害が出たことを受け、W杯日本大会組織委員会が決定した。W杯開催に向け、さまざまな準備を重ねてきた釜石市。先月25日に行われたフィジー―ウルグアイ戦で、その夢は実現したが、残る1試合が台風で打ち砕かれてしまった。大会招致に取り組んできた関係者の間に失望感が広がる一方、ラグビーファンや市民の間には「安全第一。やむを得ない」と理解を示す声も多く聞かれた。

 

 激しい風雨に見舞われた釜石。台風に備えて仮設の施設を補強するなどした鵜住居町の復興スタジアムに損傷は見られなかったものの、周囲の沢から押し出された土砂や流木で西側駐車場が埋まるなど大きな影響が出た。

 

 国際統括団体ワールドラグビーと大会組織委員会は、安全性を優先する観点から試合の中止を決定したと発表した。前日の12日から市の幹部職員らとともに市役所に詰め、徹夜で台風の行方に気をもんだ野田武則市長。W杯釜石開催を共催する県を通して大会組織委に現地の状況を伝え、試合実施の可能性を探り続けたが、願いはかなわなかった。

 

 13日に市役所で記者会見した野田市長は「津波を想定して備えてきたが、台風にやられた。これも被災地の定めか…」と無念の思いを口にした。その上で、「楽しみはなくなったが、命は守られた。被災地から命を守る行動の大切さを発信することができた」と強調。「ファンゾーンでのイベントを再開し、W杯を盛り上げていきたい」と前を向いた。

 

 東京都杉並区の公務員藤野彰人さん(31)は台風に伴う列車の計画運休発表を受け、試合前日の12日朝、新幹線で東京を出発。釜石線に乗り継ぎ、前倒しで釜石入りした。

 

 試合中止の決定に「(釜石開催の意義からも)やってほしい気持ちはあったが、台風被害への対応など諸事情を考えると仕方ないのかなと。安全には代えられない」と、主催者の苦渋の決断を思いやった。

 

 2年前に復興事業の仕事で1年間、釜石に暮らした。7月には同スタジアムで行われたW杯前哨戦の日本―フィジー戦を観戦。「本番も釜石で」と楽しみにしてきたが、自然の猛威が願いを阻むことに…。

 

 台風一過の青空が広がった13日午前、藤野さんは友人と釜石が誇る世界遺産「橋野鉄鉱山」に足を延ばした。「少し観光を楽しんで帰ろうと思う。機会があればあのスタジアムでまた観戦したい」と望んだ。

 

(復興釜石新聞 2019年10月16日発行 第833号より)

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