ワールドカップ日本、3連勝に沸く〜ファンゾーン釜石「最高!」の興奮
サモアを撃破。日本の3連勝が決まると、ファンゾーンを埋めた市民が拍手、バンザイで盛り上がる=5日
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で初の8強入りを目指す日本は5日、愛知県豊田市で行われた第3戦でサモアに38―19で勝利。1次リーグで3連勝を飾り、決勝トーナメント進出に大きく前進した。この日、釜石市大町の市民ホールTETTOに設けられたファンゾーンには2500人余りが詰めかけ、パブリックビューの大型スクリーンに映し出される日本代表の快進撃に酔いしれた。
試合は日本が優勢に進めたものの、後半半ば過ぎまでサモアが1トライ差で追いすがる、じりじりとした展開。終了間際にWTB松島幸太朗がボーナス点獲得を決めるトライを奪うと、ファンゾーンに詰めかけた観客は抱き合って喜び合い、盛り上がりは最高潮に達した。
「もう、最高です!」。W杯開幕後、毎日のように大只越町の自宅からファンゾーンに足を運んでいる及川かおるさん(56)は、周りの人とハイタッチを交わしながら叫んだ。新日鉄釜石ラグビー部が日本一7連覇を達成した当時は「ラグビーって、何?」という程度の高校生だったが、「W杯釜石開催が決まって、目覚めました」。
及川さんは、復興スタジアムが建設された釜石東中の卒業生。実家は箱崎町桑ノ浜にあり、震災の津波で両親を失った。「震災後どうしても行く気になれなかった」という母校の跡地に、先月25日のフィジー対ウルグアイを観戦するため初めて足を踏み入れた。「ここに学校があったんだ…」。満員に膨らんだスタジアムの盛り上がりに感激し、気持ちも吹っ切れたという。
「今はもう、気持ちが前向きになっている。一日一日に感謝です」と及川さん。W杯閉幕までファンゾーンに足を運び続け、最高の雰囲気を存分に味わうつもりだ。
及川さんに誘われ、花巻市から駆け付けたという従兄弟の多田圭治さん(53)も「ラグビーでこんなに盛り上がる、釜石の雰囲気が素晴らしい」と興奮を隠せない。高校時代(黒沢尻工)はラグビー部のFWとして、釜石シーウェイブス(SW)RFCの桜庭吉彦ゼネラルマネジャー(当時は秋田工)と対戦したこともある。「釜石はW杯を開催する運命にあったんだと思う。市民には賛否両論があったと聞くが、結果的には良かったと思えるのではないか」と成功にエールを送る。
ファンゾーンを運営する市ラグビーワールドカップ推進本部によると、これまでの入場者は2万5千人余りに上る。大会前に見込んでいた最終的な入場者(1万4千人)を、すでに9月28日の時点で突破。日本の快進撃に合わせるように、見込みを大幅に上回る驚異的なペースで入場者数が伸びている。
(写真説明)
(復興釜石新聞 2019年10月9日発行 第831号より)
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