心癒やす「微笑みの国」、色彩明るく奔放に〜知的障害者アーティスト 小林覚さん


2019/09/13
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

色彩豊かな作品が並ぶ小林覚さんの作品展

色彩豊かな作品が並ぶ小林覚さんの作品展

 

 「微笑(ほほえ)みの国」をテーマに、釜石市鵜住居町出身の知的障害者アーティスト小林覚(さとる)さん(30)の作品展が、あす8日まで釜石市民ホールTETTOで開かれている。小林さんは現在、花巻市の「るんびにい美術館」で活動している。古里での個展は東日本大震災後初めて。明るく豊かな色調で描かれた独創的な作品約40点を展示している。

 

 作品は、自由奔放な線の造形性と明るく豊かな色調が特徴。郷土芸能を独自の色彩感覚で表現した「とらまい」や、万葉集の歌を題材に墨書の線が自在に伸び、交わる書の作品「風吹きて」などが並ぶ。

 

 音楽が大好きという小林さんは、文字をデザインした絵を描く。ザ・ビートルズの「Let It Be」や井上陽水の「少年時代」など、お気に入りの歌詞をつづった作品には、アートの一部になった「サトル文字」を見つける面白さがある。

 

 震災で鵜住居町の自宅が被災し、数多くの作品も流失した。個展には、自宅で見つかった作品の一部も展示。砂や汚れが残った状態で紹介されている。

 

家族に囲まれ笑顔を見せる覚さん(中)

家族に囲まれ笑顔を見せる覚さん(中)

 

 小林さんが本格的に絵を描き始めたのは釜石養護学校(現釜石祥雲支援学校)の中学部から。黒鉛筆のみで描いていたものが、次第に色鉛筆や油絵の具などを使った色合い豊かな作品へと変化する過程も見せる。

 

 県内各地で個展を開催している小林さん。古里釜石では学校や団体の作品展に数点出展し、さまざまな作品と合わせて見てもらうことが多かった。今回の個展は、小林さんの恩師、佐藤卓郎さん(奥州市)が企画。「震災を生き抜いた人たちの心に、作品の持つ力で癒やしと晴れやかな喜びを届けたい」と期待を込めた。

 

 小林さんは平日に美術館で創作活動を行い、週末は両親が再建した鵜住居町の自宅に帰る生活を送っている。父俊輔さん(64)は「息子の代表的な作品が集まった展示は初めて。見応えがある」とうれしそう。多くの来場を願っている。

 

 午前9時から午後9時まで。入場無料。7、8の両日は小林さんが会場を訪れる予定だ。

 

(復興釜石新聞 2019年9月7日発行 第822号より)

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