心に響く 賢治の世界〜四次元のオペラ 釜石で初演


2019/07/25
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

満島真之介さん(中央)らが演じたオペラ「四次元の賢治」

 

 宮沢賢治の作品を基にしたオリジナルオペラ「四次元の賢治―完結編」が13日、釜石市大町の市民ホールTETTOで上演された。三陸防災復興プロジェクト2019文化芸術祭の一環。思想家、人類学者の中沢新一さんが書き下ろした脚本を音楽プロデューサーの小林武史さんがオペラ作品に仕上げた舞台で、約800人が賢治の童話や詩の世界に引き込まれた。

 

 2017年に宮城県石巻市を中心に開催された震災復興支援の総合芸術祭「リボーンアートフェスティバル」で、第1幕を上演。新たに2、3幕を加えた完結編が制作され、本年8月に開幕する2回目のフェスティバルとの連携企画として釜石での初演が実現した。

 

 歌唱力でも注目を集める俳優の満島真之介さんが賢治役、小林さんのプロデュースで活躍の場を広げる歌手Salyuさんが賢治の妹トシを演じたほか、「水曜日のカンパネラ」ボーカルのコムアイさん、Salyuさんらと音楽活動を共にするヤマグチヒロコさんが出演。劇中歌で太田光さん(爆笑問題)、櫻井和寿さん(Mr・Children)らが参加した。

 

 賢治を代表する童話「やまなし」「銀河鉄道の夜」などをベースにストーリーを展開。病で死にゆく最愛の妹への思いを詠んだ「永訣の朝」、童話「双子の星」でも歌詞が用いられる「星めぐりの歌」も盛り込まれ、賢治が生んだ印象的な言葉の数々が、小林さんが奏でるメロディーに乗せてよみがえった。出演者らの熱演と映像、照明、効果音で幻想的な世界を作り上げた舞台に観客はくぎ付けとなり、今なお愛される賢治作品の素晴らしさを体感した。

 

 小川町の小笠原千寿子さん(60)は満島さんらの声量や表現力に魅了され、「難しい言葉もこういう形で聞くと理解が深まる。賢治の死に対する向き合い方などが感じられ心に響いた」と大きな感動を胸に会場を後にした。

 

 舞台あいさつで中沢さんは「岩手県が生んだ宮沢賢治は日本で最高の精神の持ち主の一人。この地で初演を迎えられたのは奇跡のようなこと」と感謝。終演後、小林さんは「東日本大震災では東北の人たちの利他的行動に世界が注目した。これは賢治が持っていた精神そのもの。この作品が利己的になりがちな今の時代を考えるヒントになれば」と期待した。

 

(復興釜石新聞 2019年7月17日発行 第808号より)

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