世界遺産 橋野鉄鉱山にも観光客続々〜満開の石割桜が迎える
大型連休後半は好天が続き、来場者が増えた世界遺産「橋野鉄鉱山」=5日
釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」には大型連休中、県外から観光客が続々と訪れた。山あいならではの一足遅い春が見学者をお出迎え。周辺はさまざまな桜が咲き誇り、登録5年目の世界遺産を彩った。遺跡エリア内に隠れるようにたたずむ「石割桜」も5日までにほぼ満開に。花崗(かこう)岩から伸びる3本のヤマザクラがボリュームたっぷりの花を咲かせ、美しい姿を見せている。12日には八重桜まつりが開かれる。
三番高炉の東側山手、山神社の拝殿跡近くに生える石割桜は、長さ約5・5メートル、高さ約1・5メートルの三角状の花崗岩の間から生育。樹高は約15メートル、樹齢は約90年と推定される。開花時期は例年5月初旬。今年は2日ごろから咲き始め、20度前後まで気温が上昇したことで一気に満開に。昨年より花の付きが良く、間近で見ると木の高さと枝先まで連なる花が迫力の光景を生みだしている。
満開となった「石割桜」を眺める観光客
地元出身の釜石観光ガイド会員、三浦勉さん(67)は「高炉の石組みに使おうとして割った岩が結局使われず、割れ目に桜の種が入り込み、成長したのではないか。近くにはノミが入れられた石も残る」と同所と桜の関連性を推測。「根がどこまで張っているか分からないが、栄養を取りづらい環境であることは確か。ゆえに幹が太くなるのは他の木より遅いだろうが、今まで枯れる様子はなく、花の勢いもいい。まだまだ育っていきそう」と今後に期待を寄せる。
同桜は岩手の桜を紹介する書籍に掲載されているが、釜石在住でも知らない人が多い。5日、大平町から訪れた夫婦も「全然知らなかった。あんな所にあったとは」と目を凝らした。三浦さんによると花は「風が吹かず、天気さえ良ければあと3日ぐらいは持ちそう」とのこと。
連休期間中はインフォメーションセンターに常駐した観光ガイドの案内で見学を楽しむ人も多かった。八戸市から訪れた内藤生美さん(44)、慧君(10)親子は5日、三浦さんのガイドで高炉跡を見学。生美さんは「歴史の重みを感じる。八戸も工業のまちなので、身近に感じた。子どもにも何か響いてくれれば」と期待。石に興味があり、同所の見学を自ら希望した慧君は「鉄の作り方を知って驚いた。高炉の上の部分も残っていたら見てみたかった」と目を輝かせた。
娘さんとともに車で訪れた盛岡市の中村洋子さん(74)は「世界遺産ということで、一度は来て見たかった。こんなに山奥にあるとは想像しなかった。昔、実家の近くに採石場があり、発破の音がうるさいほどだった。高炉の石組みを近くの斜面から切り出したことを聞き、それを思い出した。ガイドの説明があって、よく分かりました」と感想を話した。
橋野鉄鉱山は、16年の台風10号による豪雨で遠野市からのアクセス道路「笛吹峠」が通行止めになったことが影響し、見学者数が落ち込んだ。復旧工事の完了で昨シーズンから通行可能となり、今年のゴールデンウイークは10連休という好条件も重なったことで、見学者数は回復傾向に。同センターの入館者数は4月27日~5月6日までの10日間で計1826人に上った。来場者の車は大半が県外ナンバーで、九州、関東、北海道からの車も見られた。
(復興釜石新聞 2019年5月8日発行 第788号より)
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