「感動を伝えられるピアニストに」日本音楽コンクール1位の小井土文哉さん〜さらなる飛躍へ古里で演奏会
地元釜石での初公演。思いを込めた演奏を披露する小井土さん
釜石市出身で桐朋学園大ソリスト・ディプロマコースの小井土文哉さん(23)=東京都在住=によるピアノ・リサイタルが6日、大町の市民ホールTETTOで開かれた。昨年10月の第87回日本音楽コンクールピアノ部門本選での1位受賞を記念し、地元での初公演。古里で奏でる喜びと感謝の思いを優美な音色に乗せ、詰め掛けた来場者約800人を魅了した。
大只越町出身の小井土さんは、3歳でピアノを始めた。釜石小5年で東北ショパン学生ピアノコンクール小学生の部で金賞、進学した盛岡一高在学中に全日本学生音楽コンクール東京大会高校生の部で1位を受賞。桐朋学園大進学後も国内外の音楽コンクールで数々の賞を受賞している。
同大を首席で卒業し、現在、同コース2年に在学中。昨年、若手演奏家の登竜門とも言われる第87回コンクールで最高の栄誉に輝いたのに続き、今年3月には英国の著名なピアノコンクールであるヘイスティングス国際ピアノコンチェルトコンペティションでも1位を獲得した。
公演では、バッハの「フランス組曲第5番」やブラームスの「4つの小品Op.119」、最も好きな作曲家として挙げるロシア人のスクリャービン作曲「ソナタ第2番・幻想ソナタ」などアンコールを含めて7曲を演奏した。
公演終了後、感動を伝える観客らに笑顔で応える小井土さん
小学1年からピアノを続けている小佐野町の菊池莉歩さん(釜石高2年)は「好きな曲への思いが込められた素晴らしい演奏。表現力が卓越。好きなことを仕事にできるのがすごい。好きなことにまっすぐに取り組み、努力する姿勢を見習いたい」と力をもらった。
小井土さんが音楽の道を志すきっかけとなったのは、高校進学直前に発生した東日本大震災。実家は幸いにも直接の被害を免れたが、音楽どころではなく、ピアノから遠ざかった。戻るきっかけとなったのが震災後に盛岡市で開かれた演奏会。「心に響いた。その感動を自分の演奏で届けたい」と道を定めた。
道のりは平たんではなかったが、さまざまな自分を表現できるピアノを追求し、地元で演奏する喜びを選曲に込めた小井土さん。「びっくりするくらい多くの人に聴いていただいた。やりがいがあった」と充実感をにじませた。
高校時代に地元を離れたが、「音楽活動の根本にあるのは釜石。古里の風景を思い浮かべて演奏することもある。続けられること、聴いてもらえることに感謝の気持ちでいっぱい」と小井土さん。演奏する楽しみをより深めた様子で、「感動を伝えられるピアニストに」と力を込めた。
(復興釜石新聞 2019年4月10日発行 第781号より)
小井土文哉 ピアノ・リサイタル
復興釜石新聞(合同会社 釜石新聞社)
復興釜石新聞と連携し、各号紙面より数日の期間を設け記者のピックアップ記事を2〜3点掲載しています。問い合わせ:0193-55-4713 〒026-0044 岩手県釜石市住吉町3-3