釜石道悲願の全線開通、「希望の道」に膨らむ期待〜沿岸道接続、内陸部と直結
悲願の釜石道全線開通を祝いテープカットする安倍首相ら
東日本大震災からの被災地復興プロジェクトとして国が整備を進めてきた復興支援道路の東北横断自動車道釜石秋田線は9日、釜石花巻道(釜石市―花巻市、80キロ)の最終区間、釜石ジャンクション―釜石仙人峠間6キロが開通し、全線開通した。東日本大震災から8年。復興道路の三陸沿岸道釜石南―釜石両石間14キロも同時開通し、横断道と接続した。縦、横の両軸が釜石で連結。沿岸と内陸の物流、観光促進などに期待が大きく膨らむ。
開通式は午前10時50分から甲子町の釜石高付近で行われ、関係者や一般参加の市民ら約500人が出席。達増拓也知事は「本県沿岸と内陸が初めて高速交通体系で結ばれる。物流や観光が促進し、復興が加速することを確信する」とあいさつ。釜石市の野田武則市長は「長年の悲願が実現し、感慨もひとしお。震災の多くの犠牲によって加速的な整備が進められたことを忘れてはならない。命の道として機能した三陸沿岸道が一日も早く全線開通し、未来への希望の道となるよう願う」と期待を述べた。
式典の途中から安倍晋三首相が駆けつけ、「この道路を使ってラグビーワールドカップ(W杯)に国内外から観光客が訪れ、力強い復興の姿を感じてほしい」とあいさつ。野田市長らとともにテープカットし、全線開通を祝った。
歓迎する子どもらに握手で応える安倍首相
このあと、工事関係や物流業者のトラック、用地提供者が乗ったマイクロバスなど約90台がパレード。釜石市民吹奏楽団のファンファーレに合わせて出発。釜石道から釜石ジャンクションを経由し、三陸道の釜石中央インターチェンジまで約5キロを走った。降り口では大勢の市民らが「祝開通」の小旗を振って車列を迎え、安倍首相も車から手を振って応えた。
用地提供者として開通式に出席した甲子町の佐々木一郎さん(70)は「一日も早い全線開通を願い、インターチェンジ付近にある妻の実家の土地を提供した。便利になって本当に良かった。車で遠くまで出掛けるのが楽しみ」と期待を膨らませた。
住吉町の釜石トンネル付近から釜石中央インターチェンジ方向を望む=9日午後3時20分
午後3時、一般車両の通行開始を同インターチェンジ入り口で見守った定内町の及川サツミさん(79)は「この日が来るのを心待ちにしていた。青森、仙台、北上市に住む息子や娘も、連休にはこの道路を使って来たいと言っている」と顔をほころばせた。
釜石花巻道は1990年代に事業化され、2007年には仙人峠道路が先行する形で開通した。震災後は復興のリーディングプロジェクトとして整備が進められ、今年秋に釜石で開催されるラグビーW杯に間に合わせた。釜石花巻道の開通により、花巻市からスタジアムのある鵜住居町までの所要時間は約1時間25分となり、震災前と比べ約40分も短縮する。
(復興釜石新聞 2019年3月13日発行 第773号より)
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