紅葉の坂道を駆け上がる〜仙人峠マラソンに653人、復興途上の釜石に勇気
午前10時、峠コースの参加者が一斉にスタート。まずは下りへダッシュ
第9回かまいし仙人峠マラソン大会(同実行委主催)は28日、釜石市甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所を発着点に2コースで行われた。全国から18~90歳の男女653人が集結。美しく色づいた山々の紅葉、市民ボランティアや沿道の温かい応援に後押しされたランナーが、名物の難コースに果敢に挑み、復興途中の釜石に勇気と感動をもたらした。
開会式で小泉嘉明実行委会長が参加者を歓迎。最も遠くから参加した兵庫県姫路市の佐藤恒義さん(62)が「それぞれの目標に向かって最後まであきらめず、全力で仙人峠を駆け上る」と選手宣誓した。
大松で折り返す10キロコース(標高差約160メートル)に246人、遠野市との境、仙人トンネルまでを往復する峠(17・2キロ)コース(同約400メートル)に407人が出場。午前10時に峠、10分遅れで10キロがスタートした。
両コースとも大松までの下りを快走後、一転して上りへ。峠コースは大橋トンネルを抜けた10キロ地点付近から一層険しい急坂となり、参加者は体力と精神力を振り絞り、頂上への道のりをひた走った。ゴール後は完走した充実感に浸り、仲間と喜びを分かち合った。
急坂を懸命に駆け上がる参加者
静岡県磐田市の三好將之さん(42)は、地元サッカーチーム「ジュビロ磐田」のユニホームとラグビーの「ヤマハ発動機ジュビロ」の旗、オリジナルデザインのマスクを身に着け注目の的。「いっぱい応援してもらい、すごく楽しかった。しんどい時は紅葉を見ながらね」と3年目の完走にうれしさ爆発。震災後、ボランティアで釜石・大槌に何度も足を運んでおり、「地元の皆さんと一緒に笑ってマラソンを楽しめるようになれたのが何より」と心の復興へも実感を込めた。
両コースを男女、年齢で区分した11部門で上位6人を表彰した。峠コースの頂点を制したのは、男子39歳以下で1位となった盛岡市の岩手大生吉田拓郎さん(18)で、記録は1時間。今大会参加者中最年少で、好タイムをたたき出した。大会新記録は、峠コース男子40歳以上59歳以下の部で、盛岡市の長澤晃也さん(40)が1時間18秒、10キロコース女子40歳以上59歳以下の部で、滝沢市の柴田真由美さん(42)が41分をマークした。
第2回大会のゲストランナー瀬古利彦さんと国近友昭さんからの寄付金で創設された「瀬古杯」「国近杯」は、釜石大槌地区の参加者の中から両コースの男女1位に贈られる。峠コース女子1位で瀬古杯を獲得した県職員の伊藤章代さん(釜石市)は、一昨年に続き2回目の受賞。「大雨だった昨年よりタイムが振るわなかったので(受賞に)驚いた。また、頑張りたい」と今後へ意欲を見せた。
その他の両杯受賞者は次の通り。
【瀬古杯】高橋祐輝(釜石市)=峠コース男子1位【国近杯】藤田洸(釜石市)=10キロコース男子1位、太田裕美(釜石市)=同女子1位
(復興釜石新聞 2018年10月31日発行 第736号より)
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