復興後押し、鉄人レース〜釜石はまゆりトライアスロン、被災の根浜に感動と勇気


2018/09/11
復興釜石新聞アーカイブ #スポーツ

根浜の海に向かって一斉にスタートするトライアスリート=2日午前8時

根浜の海に向かって一斉にスタートするトライアスリート=2日午前8時

 

 第24回釜石はまゆりトライアスロン国際大会(同実行委主催)は2日、釜石市鵜住居町の根浜海岸特設会場を発着点に開かれた。震災前と同じ総距離51・5キロ(スイム1・5キロ、バイク40キロ、ラン10キロ)のレースが復活して2年目。復興工事の関係で、かつてない急坂のバイクコースが設定されたが、選手らは最後までアスリート魂を見せつけ、被災地に感動と勇気をもたらした。

 

 51・5キロを個人で競うスタンダードに150人、2~3人で3種目を分担するリレーに16チーム、各種目半分の距離で競うスプリント(総距離25・75キロ)に25人が出場。北海道から愛媛県まで、16~75歳の選手が集結した。

 

 午前8時、スイム(水泳)からスタート。海上は波も穏やかで、選手は存分に実力を発揮した。バイク(自転車)は、新設された市道箱崎半島線を通り、国道45号から県道釜石遠野線を橋野町で折り返すコース。根浜―国道間はベテラン選手も舌を巻くきつい勾配で、特に帰路の登り坂は過酷さを極めた。ラン(長距離走)は根浜から箱崎町の周回コースで行われた。

 

 スタンダード総合1位(1時間53分58秒)は、大船渡市出身でプロ選手として力をつける寺澤光介さん(24)=東京都=。後続を大きく引き離し2連覇を果たした。高校1年で初挑戦したのが同大会で、「成長した姿を見せられた。トライアスロンの力で釜石を元気にしたい」と思いを明かした。スクールも開くトライアスロンチーム「SUNNY FISH」に所属。強豪選手に刺激を受けながら練習を重ねる。「2年後の東京とその次の五輪を目指す」と一層の精進を誓った。

 

 リレーで2位(2時間12分28秒)に入った「チーム・ハイ・ゲンキ」は、玄米酵素(本社・札幌市)の社員2人で結成。バイクの村上純子さん(54)は震災前から同大会に参加。東京勤務の新入社員、浅野郁規さん(23)は初めてながら得意の水泳で5位通過し、ランでも活躍した。「沿道から声援を受けると体も軽くなった。岩手の被災地の現状も知り、まだ何かできることがあるのではと考えさせられた」と浅野さん。

 

 今大会はボランティアを含めたスタッフ約500人で運営し、各持ち場で競技をサポートした。地元根浜の女性陣は給水を担当。被災し、栗林町に自宅を再建した佐々木ナツさん(82)は「この大会がないと夏が終わった気がしない。根浜はやっぱり古里。なじみの顔触れと一緒に活動できて幸せ。被災前みたいに大勢の人が来てくれるようになれば」と、出場者が400人規模だった時代を懐かしんだ。

 

 必死にゴールを目指す選手に大きな力を与えたのが、2008年の北京五輪で5位入賞を果たした井出樹里さん(35)=神奈川県=。女子1位(2時間3分43秒)でゴール後、後続の選手に声援を送り続けた。スタートから3時間40分の制限時間が迫ると、最後の3選手に並走。つないだ手を掲げゴールに導いた。

 

 「最後まであきらめずに走り切ろうとする姿に自分も学ばせてもらった。普段たくさんの応援を受けており、少しでも恩返しできればとの思いがあったが、今回もまた皆さんから力をもらった」と2年目の釜石大会を心に深く刻んだ。

 

 大会を主管する釜石トライアスロン協会の小林格也会長は「コース変更もあり大変だったが、無事に終えられて何より。今後は釜石の選手育成が課題。来年はラグビーW杯があるので、日程やコースを調整し、より良い形で開催したい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2018年9月5日発行 第720号より)

 

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