林野火災で焼けたスギ材活用〜「一本歯半分下駄」販売開始、釜石地方森林組合


2018/09/04
復興釜石新聞アーカイブ #産業・経済

釜石地方森林組合で販売する「一本歯半分下駄」

釜石地方森林組合で販売する「一本歯半分下駄」

 

 釜石地方森林組合(久保知久代表理事組合長)は、昨年5月に発生した釜石市平田尾崎半島の林野火災で焼けたスギの木を使った「一本歯半分下駄(げた)」を考案し、販売を始めた。山林再生、山林所有者の支援と、来年のラグビーワールドカップ(W杯)釜石開催に向けた地場産材を活用した製品づくりを結び付けた企画。同組合では「緑の再生につながる循環づくりと被災した山林所有者への応援、スポーツのまち釜石を発信するものになれば」と期待を込める。

 

 げたをプロデュースしたのは、雫石町在住の漫画家そのだつくしさん。元々、半分げたを愛用していて、創作活動の傍ら山歩きを楽しみながら一本歯のげたでトレーニングをしていたという。趣味が高じて、履き心地や鼻緒の長さなどにこだわった「県産材でトレーニング用のげたを作りたい」と思案。知人を介し、木材加工を営む遠野市の「ノッチアート遠野」に製作を相談していた。

 

 一方、同組合では2016年頃からW杯に向け、地域産材を使った日本の伝統文化であるげた作りを計画。同じ木材加工業者に試作品作りを依頼していた。

 

 2つの動きを結び付けたのが林野火災という出来事。被害の大きさが伝わると、全国から「焼けた森林の復旧に使ってほしい」と支援の寄付が相次いだ。その一人がそのださん。同組合に寄付金を届けたことで、下駄プロジェクトが生まれた。

 

 げたのサイズは縦、横12・5センチ、厚さ2・5センチで、歯(地面に当たる出っ張り)の高さは約4センチ。通常のげたは材質が丈夫なキリで作られるが、今回は柔らかいスギを利用しており、本体と歯の接合部が壊れにくいよう工夫した。足を乗せる部分に入れた掘り込みが歩きやすさのポイントで、げたの上で足が滑らず安定。歯には厚めのゴムを貼りつけて滑りにくくした。

 

 同組合によると、半分げたは古くは修験者が山を歩くときなどに使われていた。バランスがとりにくい分、筋力が必要になる。不安定なげたを履いたまま屈伸したり歩いたりすることで、体幹トレーニングや姿勢の矯正に効果があるとされ、現在ではスポーツ業界やアスリートが注目しているとの話もあるという。

 

 そのださんも「W杯が開催されるスポーツのまち釜石発のアスリートのトレーニンググッズになれば」と期待。半分げたでトレーニングする人が増えるようにと願いを込め、「岩手下駄部」とのロゴをデザインし、げたに焼き印を入れた。スポーツをしない人の利用も呼び掛けていて、「歩きにくかったら、好きな人の手をにぎりながら」とメッセージを寄せている。

 

 げたの売り上げの一部は、被害木を伐採した後の植樹のための苗木購入などに役立てる。木材が売れることが被災した山林所有者の応援にもなる。同組合の手塚さや香さん(39)は「焼けた木も素材として使えることを知ってほしい。げたが山林の復旧に貢献し、スポーツのまち釜石ならではのトレーニング方法として広まったら」と願う。

 

 価格は、同組合のホームページから注文する場合1足8715円(税込み)、同組合事務所での購入で箱が不要な場合は8532円(同)。今秋からは市内の道の駅などで販売を始める予定にしている。
 問い合わせは同事務所(電話0193・28・4244)へ。

 

(復興釜石新聞 2018年8月29日発行 第718号より)

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