復興願う横綱土俵入り、堂々の四股 被災地に力〜鵜住居で披露、市内から1千人「よいしょ」と掛け声
力強い土俵入りで観客を沸かせた稀勢の里関。右隣は露払いを務めた岩手出身の錦木関
東日本大震災の被災地復興を願う「横綱土俵入り」(日本相撲協会主催)が14日、釜石市の鵜住居小・釜石東中で行われた。現在4人いる横綱のうち稀勢の里(第72代)、日馬富士(第70代)の両横綱が来釜。復興途上の鵜住居の地に希望を与える力強い土俵入りを見せ、市内外から集まった約1千人の胸を躍らせた。
会場は当初、同小・中のグラウンドを予定していたが、雨の影響で体育館に移して開催。横綱を含む幕内力士6人のほか、行司や呼び出しなど総勢約50人が訪れ、観客から熱烈な歓迎を受けた。全員で震災犠牲者に黙とうした後、両横綱が献花。巡業副部長の玉ノ井親方から野田武則釜石市長に記念品が贈られた。
やぐら太鼓の3種の打ち分け、相撲甚句が披露され、いよいよ横綱の土俵入り。露払い、太刀持ちの力士らとステージに上がり、日馬富士は「不知火(しらぬい)型」、稀勢の里は「雲龍(うんりゅう)型」の土俵入りを見せた。かしわ手を打ち、四股を踏む横綱に観客から「よいしょ」の掛け声が飛び、その雄姿にたくさんのカメラが向けられた。
大勢の観客に迎えられ花道を進む日馬富士関ら
鵜住居町の藤原正敏さん(72)は初めて生で見る土俵入りに「最高。やっぱり元気が出るね。相撲はテレビでよく見ていて稀勢の里のファン。けがを心配していたが元気そう。これからも応援したい」と大感激。同町の実家に仙台市から帰省中の手塚温美さん(29)は幼い子ども2人と来場。「(横綱は)すごく大きくて、かっこいいですね。被災地のために来てくれるのはありがたい。みんなうれしいと思う」と古里にもらった力に感謝した。
被災地に力を与えた両横綱ら日本相撲協会の一行
被災地での復興横綱土俵入りは7年連続で行われ、本県では2011年6月(山田町、大槌町、大船渡市、陸前高田市)、12年8月(宮古市)以来。今年1月、日本人としては19年ぶりの横綱となった稀勢の里関は、昇進後初めての被災地での土俵入りに「温かい声援をいただき、もっと頑張らねばという気持ちになった。見えないところで苦しんでいる人もまだまだいると思う。少しでも力になりたい」とさらなる精進を誓った。日馬富士関は「相撲を通じて皆さんに喜びと力を与えられたらと思い、心を込めて土俵入りをさせていただいた。少しずつ復活しているまちがこれから発展していくことを願う」と思いを込めた。
盛岡市出身の前頭、錦木関は稀勢の里関の露払いを務め、観客から大きな声援を受けた。「すごく光栄なこと。いろいろな人に自分を知っていただき、ありがたい」と、地元県民の期待をしっかりと受け止めた。
一行は土俵入り披露に先立ち、釜石駅前の復興の鐘と鵜住居町の鵜住神社を訪れ、鎮魂と復興への祈りをささげた。
(復興釜石新聞 2017年8月19日発行 第614号より)
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