帰還の喜び分かち合う「これからも仲良く」〜片岸町室浜地区、かさ上げ土地造成
愛着のある室浜地区をみんなで盛り上げようと気持ちを高める住民ら
東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた釜石市片岸町室浜地区。震災から6年4カ月が経過し、住民の帰還が進んだ同地区で16日、室浜町内会(佐々新一会長)による震災後初の住民交流会が開かれた。かさ上げ造成された土地で新たな生活を始めた住民らは、古里の良さを実感しながら、室浜集落の再生に思いを強くした。
交流会は当初、地区内の観世音神社の駐車場で開く予定だったが、雨の予報を考慮して室浜漁港の屋根のある岸壁に場所を移して開催。震災後、住民が譲り受け町内会に託されたこいのぼりで会場を彩り、震災前のにぎわいを再現した。集まった住民25人は酒を酌み交わし、バーベキューを味わいながら楽しい時間を共有した。
震災前、同町内会には69世帯が加入していたが、津波で全戸が流失。住民約20人が犠牲になった。命をつないだ住民らは流失を免れた地元の民宿などに身を寄せ、避難所生活の後、市内各地の仮設住宅に移った。
同地区の復興は防災集団移転促進、漁業集落防災機能強化の2事業が導入され、被災前より6~8メートル高く盛り土造成された宅地が完成。2015年11月から土地の引き渡しが始まった。地区内には市の戸建て復興住宅7戸が整備され、自力再建でこれまでに11戸が完成。現在、42人が暮らしている。
新たな姿に生まれ変わった室浜地区
最も早く自力再建を果たした佐々定三さん(71)は妻と娘の3人暮らし。「当初は街灯もなく夜になると寂しかったが、周りに家が増えてきて安心感がでてきた。少人数の部落なので、みんな仲良くやっていければ」と期待。刺し網漁を続ける現役漁師で、海の仕事ができる喜びもにじませた。
復興住宅に入居してちょうど1年になる山崎邦男さん(78)は「最高だね。海を眺めて暮らせるのがいい。ここで生まれた人間だからね」と地元に戻れたうれしさをかみしめる。震災前まではホタテやカキなどの養殖業に励んだ。「まだ、みんな帰ってきたばかりで落ち着かない。徐々に良いまちになっていくのでは」と地区の未来を思い描いた。
帰還を果たす人がいる一方で、復興事業の遅れや将来の津波への不安、通院や買い物の問題など、さまざまな理由で同地区への帰還を断念した人も多く、現段階の居住戸数は震災前の4分の1程度。子育て世代がおらず、高齢化が顕著となっている。佐々会長(50)は「高齢者も運動がてら出てきて、草刈り作業など町内会活動に無理の無い範囲で参加してもらえれば。顔を合わせることで互いに会話もできる」と、健康で住みよい地域づくりを願った。
今年度中には集会所を併設した新たな消防屯所が地区内に建設される見込みで、防災面の機動力向上も図られる。漁港の周辺は今後、防潮堤建設や道路改良などの復旧工事が進められる予定。
(復興釜石新聞 2017年7月19日発行 第606号より)
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