水産復興 人材育成の拠点に〜岩手大学釜石キャンパス開設、平田のサテライトに併設 看板除幕式


2017/06/20
復興釜石新聞アーカイブ #文化・教育

看板を除幕し、今後の連携へ固い握手を交わす岩渕学長(左)と野田市長

看板を除幕し、今後の連携へ固い握手を交わす岩渕学長(左)と野田市長

 

 昨年度から水産教育の専門コースを新設している岩手大学(岩渕明学長)が本年度、釜石市平田に「釜石キャンパス」を新たに開設。11日、キャンパスの看板が掲げられ、市内のホテルで開設記念フォーラムが行われた。震災で壊滅的な被害を受けた三陸水産業の復興と持続的発展に寄与する人材育成の拠点誕生に、関係者が大きな期待を寄せた。

 

 釜石キャンパスは、2013年3月に平田埋め立て地に竣工(しゅんこう)した同大の研究施設「釜石サテライト」に併設。岩渕学長と野田武則釜石市長が看板を除幕した。野田市長は「大学キャンパス設置は長年の悲願。学生が安心して勉学に取り組める環境を整えたい。ここから地域の水産をリードしていく人材を輩出できれば」と思いを込めた。

 

平田の「岩手大学釜石キャンパス」

平田の「岩手大学釜石キャンパス」

 

 震災以降、復興推進や地域再生への課題解決を使命としてきた同大は昨年4月、学士課程の全学部を改組し、農学部内に「食料生産環境学科水産システム学コース」を設置。本年4月には大学院修士課程の3研究科を統合した「総合科学研究科」を新設し、「地域創生専攻・地域産業コース」に「水産業革新プログラム」を設けた。

 

 水産コースの学部生は現在、1年生22人、2年生23人。釜石キャンパスでは、希望者が3年生後期から卒業まで学ぶことになっており、来年10月から現2年生が釜石での教育研究活動をスタートさせる。また、同プログラムを専攻する大学院生は現在1人。すでに釜石での研究を開始している。

 

 洋野町出身の学部2年、小田彩さん(19)は「海に近い場所で勉強できるので環境的にもいい。三陸の養殖や関係する病理の研究をしたい」と、釜石キャンパスへの配属を希望。岩渕学長は「3年後には約50人の学生が来る見込み。サテライトの敷地内に講義室や研究室を備えた総合教育研究棟の建設も計画中で、早期に実現できれば」と意欲を見せた。

 

 一般市民も参加したフォーラムでは、岩渕学長が記念講演。01年3月、県内で最初に相互友好協力協定を締結した釜石市との連携の歩み、民間企業との共同研究開発、大学の機能強化への取り組みなどを説明した。

 

 仙台市出身、大学院1年の大場由貴さん(25)は自身の研究内容を発表。外来種のヨーロッパザラボヤが養殖ホタテに付着し深刻な被害を及ぼしていること、付着させない技術を求め生態などを研究中であることを明かした。「専門分野だけでなく幅広い知識を身に付け、水産業のシステム全体を捉えて考え、課題解決へ行動できる人になりたい」と大場さん。

 

記念フォーラムで発表した小笠原咲紀さん(左)と大場由貴さん

記念フォーラムで発表した小笠原咲紀さん(左)と大場由貴さん

 

 水産コース唯一の釜石市出身者、小笠原咲紀さん(20)も、これまでの学習内容を報告した。小笠原さんは鵜住居町出身。自身も被災した経験から、「津波で地元水産業が大きな被害を受け、危機感を持った。将来は何らかの形で水産業復興の力になりたい。3年になってから研究をスムーズに進められるよう今は必要な知識を習得していきたい」と決意を新たにしていた。

 

(復興釜石新聞 2017年6月14日発行 第596号より)

 

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