山の魅力、課題を語り合う「大松コース」復活を望む声も〜石楠花荘 早期改修へ、五葉山フォーラムで情報交換
三陸地域が誇る名峰「五葉山」について理解を深めたフォーラム
五葉山石楠花荘改修促進協議会(市川滋会長=釜石山岳協会顧問)主催の「五葉山フォーラム」が5月28日、釜石市大町の情報交流センター釜石PITで開かれた。五葉山(標高1351メートル)の素晴らしさを再認識し、老朽化する避難小屋「石楠花(しゃくなげ)荘」の早期改修への機運を高めようと初めて企画。登山愛好者ら約80人が参加し、同山の存在意義や登山の課題について意見を交わした。
東北学院大の佐々木俊三学長特別補佐が「山」の歴史的精神的意義について基調講演。五葉山に関わる団体から4人が同山の魅力やこれまでの活動経過、今後の展開などを語り合った。
五葉山自然倶楽部、森の文化塾の中嶋敬治事務局長は四季折々の風景、同山がまたがる大船渡、住田、釜石の3市町から見た姿など大自然の息づかいが感じられる写真を公開。同山自然保護管理員の鈴木一敏さんは、大船渡市の日頃市中による登山道清掃などの奉仕活動を紹介した。同校は石楠花荘改修への募金活動にも協力している。日頃市地区には五葉山神社があり、古くからの信仰が地域の結いの精神も育んでいることを明かした。
釜石勤労者山岳会の足立行雄さんは、長年にわたる五葉登山の思い出を披露。「途中に危険箇所がなく2時間ほどで登れる山。安心して登れるのは石楠花荘の存在が大きい。いざという時の駆け込み寺にも。少しでも早く改築が実現すれば」と期待を込めた。
標高が低く積雪が少ない五葉山は、多様な動植物が生育。里山から山頂にかけヤマツツジやハクサンシャクナゲ、固有種のゴヨウザンヨウラクなど美しい花々が見られ、沢が多く水量に恵まれていることから渓流にはイワナやヤマメ、森にはホンシュウジカ、ツキノワグマ、イヌワシなどが生息する。山頂から望むリアス式海岸、早池峰山など周辺の山々も展望できる雄大な眺望は登山者を引きつけてやまない。1966年に県立自然公園に指定されている。同促進協の市川会長は「石楠花荘付近は湧き水が豊富。山頂から50メートルしか標高差のない所で地下水が出るのは非常に珍しい」と説明した。
意見交換では、倒木で通行止めが続く「大松コース」の復活を望む声が上がった。「ある登山道だけに人が集中すると道が傷んでくる。大松コースは森の景観が格別。再建に向け、みんなで知恵を絞る機会も必要」との助言があった。
同促進協は五葉山山麓の山岳会など3団体により昨年4月に発足。石楠花荘改修に向け署名、募金活動を展開し、3市町で組織する五葉山自然保護協議会(会長=野田武則釜石市長)への要望活動を続けてきた。募金額は300万円に到達し、現在も継続中。今年4月29日の山開きでは、野田市長や3市町の関係職員が山に登り、現状をじかに見た。
促進協の事務局を務める桝澤洋光さん(釜石山岳協会理事)は「視察には建築士も同行し、建物を診断してもらった。今年度中に事業化への道筋がつけば」と願った。
(復興釜石新聞 2017年6月3日発行 第593号より)
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