春を運ぶSL銀河〜おもてなしも温かく、釜石に一番列車
SL銀河の旅を楽しみ釜石駅に到着した乗客。ホームでのさまざまな歓迎に笑顔を広げた=29日
観光面からの復興支援と地域活性化を目的に2014年から運行を開始した蒸気機関車「SL銀河」が、大型連休初日の4月29日、今季の定期運行に入った。SLが走るJR釜石線(花巻―釜石間、90・2キロ)の各駅では、郷土芸能やご当地キャラクターが乗客をお出迎え。4年目の運行を熱く歓迎した。9月30日までの土日・祝日を中心に上下計51本の運行を予定する。
午前10時37分花巻発のSL銀河は、出発から約4時間半後の午後3時10分すぎ、釜石駅に到着。定員176人の客車4両は満席で、ドアが開くと家族連れや旅行仲間のグループなどが次々にホームに降り立った。
釜石市のキャラクター「かまリン」、歓迎の横断幕を広げた観光関係者やJR社員らが乗客を迎え、対面するホームでは錦町虎舞が威勢のいい演舞で到着を盛り上げた。ユニホーム姿の釜石シーウェイブス(SW)RFCのダラス・タタナ選手(25)は記念撮影にも応じ、旅の思い出作りに一役買った。駅舎前ではホタテ稚貝汁をお振る舞い。釜石ならではのおもてなしが光った。
妹と二人旅という仲裕美さん(埼玉県在住)は「SL銀河の魅力は宮澤賢治の世界観。沿線の方が手を振ってくれる歓迎ムードも好き。明日も乗って帰ります」と、昨年の青森県での特別運行に次ぐ2回目の乗車を満喫した。
家族6人で初めて乗車した東京都の藤井かりんさん(12)は「普段見られない自然の景色をたくさん見られた」、弟の朗君(6)は「(車内の)プラネタリウムが楽しかった」とにっこり。祖母の永山房子さん(66)は「汽笛の音が哀愁を漂わせ、胸がキュンとなる。各駅のおもてなしにもびっくり」と大感激。震災直後、ボランティア活動で大槌町に入った経験があり、「当時はまだ釜石駅前にがれきがあった。こんなにも変わったとは。明るい感じになってきた」と6年の歳月を実感した。
今年、車内で上映する宮澤賢治の「銀河鉄道の夜」をモチーフとしたプラネタリウムは、色彩豊かな映像や賢治が残した言葉、曲の導入で新たな楽しみが増えた。撮影スポットとしてにぎわう遠野市宮守町「めがね橋(宮守川橋りょう)」近くの道の駅みやもり施設内には、SL銀河インフォメーションコーナーが設置され、発信力がより高まった。
JR東日本盛岡支社の広報担当者は「お客さまに喜んでいただくのと復興の後押しがSL銀河の大きな目的。1人でも多くのお客さまに沿岸に来ていただければ」と乗客数増加に期待を寄せる。昨年は4月23日から10月10日までの期間中、計47本を運行。約6500人が乗車し、前年並みの平均乗車率8割を維持した。
花巻へ 桜舞太鼓でお見送り
SL銀河運行2日目の30日は、釜石から花巻への上り運行。午前10時55分の発車を前に、釜石駅ホームでは唐丹町の桜舞太鼓が演奏を披露し、出発に花を添えた。
乗客や見物客は黒光りする重厚な機関車をバックに記念撮影したり、出発準備の様子を見学したりと、貴重な光景を脳裏に焼き付けた。燃料の石炭を燃やす匂い、蒸気を上げる音もSLを楽しむ要素で、感覚器官をフル稼働し、その魅力を体感した。
発車時刻には、釜石駅の工藤冨士雄駅長が出発合図。旅立ちの気持ちを高める桜舞太鼓の音が響く中、ホームでは一般市民を含む多くの人たちが手を振り、滑り出す車両を笑顔で見送った。
SL銀河の出発合図をする釜石駅の工藤冨士雄駅長。かまリンも元気にお見送り=30日
SLの見物と見送りに訪れた松田翔希君(甲子小1年)と母親の真帆さん(41)は、運行当初から何回か見に来ているといい、「近くで見ると迫力が違う。釜石にSLが来ると、うれしい気持ちになる。まだ乗ったことがないので、ぜひ乗ってみたい」と目を輝かせた。
SL銀河は残る大型連休期間中、3、4、6、7日に運行。一部を除いて、ほぼ満席に近い状態だという。
(復興釜石新聞 2017年5月3日発行 第585号より)
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