震災忘れない、命を守る行動確認〜鵜住居小で避難訓練、地域住民も参加 避難階段上る
津波避難階段を懸命に上がり、避難する鵜住居小児童。命を守る行動を体験しながら確認した
釜石市鵜住居町の鵜住居小(村上清校長、児童150人)で9日、下校時の地震・津波を想定した避難訓練が行われた。同校児童の登校方法は徒歩とスクールバスがあり、スクールバスを使用した下校時の訓練は震災後初めて。児童のほか、スクールガードとして登下校時の安全確保に協力する地域住民、保護者らも参加し、いつかまた起こりうる津波に備え、自分の命を守るための適切な行動を確認した。
下校時の津波を想定
震災の津波で校舎が壊れ、津波浸水区域外に建設された仮設校舎で授業を続けている同校では地震、火災訓練などを独自に行っている。昨年は市の津波避難訓練にも参加した。震災後、地域の津波避難場所が増えていることから、避難場所や避難の仕方を確認するとともに、帰宅途中に大きな地震や津波が発生した場合を想定した訓練を企画した。
同校では栗林、片岸、箱崎、甲子、平田方面などに向かうバス7台を運行し、約120人が利用している。訓練では、帰宅後それぞれの状況に応じて安全を確保した上で、近くにある高台に避難する12のルートを設定。児童館を利用する児童にも近くにある高台を確認してもらうため、2つの避難経路を設けた。
このうち日向・外山地区に向かう2台のバスには38人の児童が乗車した。日向橋停留所で15人ほどがバスを降りて帰宅途中、地震が発生。警報を受け、高さ19メートルの三陸沿岸道路釜石山田道路につながる「津波避難階段」に向かった。
長内集会所に近い、鵜住居第2高架橋南側たもとに整備された避難階段は、上りきると鵜住居トンネル電気室前の広場に出る。通常、敷地の扉は外から開かず、緊急時には扉に取り付けた薄いアクリル板を壊し進入できる仕組みになっている。今回は三陸国道事務所の協力で、児童が実際にアクリル板を壊す体験もし、階段を上って経路や感覚も確かめた。
扉に付いたアクリル板を外し、避難階段に進入する児童ら
訓練終了後の反省会で、「逃げ方の流れが分かった」と話したのは澤田龍斗君(6年)。震災時は幼稚園の年長児だったが、この階段が設置される前の山の斜面を上って津波を逃れた記憶がかすかに残っているという。
一方で震災の記憶がない、知らない子もいる。後藤明衣さん(2年)は「ドキドキした。避難場所を知ったから、地震が来たら走って逃げる」と命を守る行動を学んだ。
村上校長は「いろんな災害の時に守らなければいけないのは自分の命。みんなが自分を守る力を付けることは家族の命を守ることにもつながる。しっかり力を付けよう」と児童に呼び掛け。今回の訓練では地区ごとに1カ所の避難場所を確認するものになったが、地域にはほかにも避難場所があることから本年度中に各家庭で確認してもらうことにしている。
及川美香子副校長は震災を風化させず語り継いでいくための体験として、避難訓練を継続する重要性を強調。スクールバスでの登下校時、実際に地震、津波が発生した時は運転手の判断が重要になってくることから、「今回は来年度以降の土台づくり。違った訓練方法も検討したい」と話していた。
(復興釜石新聞 2017年2月11日発行 第562号より)
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