エヌエスオカムラ「省エネ大賞」最高賞、東北の企業で初受賞〜塗装工程改善 エネルギー大幅削減、独創性を高く評価
「省エネ大賞」で最高賞を受けたエヌエスオカムラの製造ライン。新沼伸一技術部長(写真)が塗装工程の改善をけん引した
釜石市の新日鉄住金釜石製鉄所構内で操業する鋼製家具製造のエヌエスオカムラ(鎌倉康雄社長)が、一般財団法人省エネルギーセンター(東京)が主催する2016年度の「省エネ大賞」で、省エネ事例の最高賞に当たる経済産業大臣賞を受賞した。コスト削減を狙いに家具の塗装工程に導入した独自の取り組みが、エネルギー消費量の大幅な削減につながり、先駆的、独創的な省エネ策として高く評価された。東北に本社を置く企業が同賞を受けるのは初めて。
鋼製家具を塗装する工程の前処理では、リン酸などの薬剤を鉄材に吹き掛け、腐食させて塗料をのりやすくするのが一般的。その際、鉄を反応させるために薬剤を60度程度にする必要があるが、同社は独自の添加剤を混ぜた薬剤で鉄をコーティングして塗料を付着させることで、常温で処理することに成功した。
これにより従来の前処理が不要になったほか、薬剤費を75%も削減。エネルギー消費量も従来と比べ16%削減した。さらに、リン酸化剤で処理した場合に生じる酸化物などの廃棄物が発生しないことから、年間約15トンに上る廃棄物、約5千万円のコスト削減につながった。
16年度の「省エネ大賞」省エネ事例部門には96件の応募があり、経済産業大臣賞に選ばれたのは4件。書類審査後の昨年10月に東京で行われた発表大会では、同社の新沼伸一技術部長が説明を担当し、優秀プレゼンテーション賞を受賞。開発プロセス、独創性、経済性、環境保全性など、その取り組みが高く評価された。
独自の取り組みの導入をリーダーとしてけん引した新沼部長は「震災後の1、2年は量、品質の安定化、元の操業状態にいかに回復させるか、軌道に乗せるのに精いっぱいだった。その後は、地方にある小さな会社の名をいかに広めるか考えてきた。こういった形で評価してもらい、本当にありがたく、うれしい」と受賞を喜ぶ。表彰式は今月15日に東京ビッグサイトで行われる。
同社はオフィス家具メーカー岡村製作所(横浜市)と新日鉄住金(東京)が共同出資し、1991年から釜石市港町の通称「中番庫」で操業を開始。東日本大震災の津波で工場が全壊し、12年5月に釜石製鉄所構内に移転、新築した。新工場の稼働を契機にさらなる効率アップに取り組み、エネルギー消費量のほぼ半分を占めていた塗装工程の改善を推進した。
同社は昨年10月、環境省主催の「循環型社会形成推進功労者表彰」でも環境大臣賞を受賞している。震災翌年の12年度の売上額は約23億円まで落ち込んだが、15年度は約29億円まで回復している。
(復興釜石新聞 2017年2月4日発行 第560号より)
ECCJ 省エネルギーセンター/平成28年度 省エネ大賞 受賞者の決定について
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