釜石市成人式、感謝を胸に「大人」の一歩〜東日本大震災から間もなく6年、復興へ思い新たに
新成人は振り袖やスーツ姿で成人式に臨み、大人としての第一歩を踏み出した
9日の成人の日を前に釜石市では8日、市と市教育委員会主催の「成人のつどい」が県立釜石高校体育館で開かれた。東日本大震災の発生から間もなく6年。当時中学2年生だった新成人は、父母や周囲の人々への感謝を胸に「大人の一歩」を踏み出すとともに、復興への思いも新たにした。
今年の新成人は1996(平成8)年4月2日から97年4月1日までに生まれた人たち。96年3月には釜石南高(現釜石高)野球部がセンバツ大会に初出場。途中で大逆転したものの、土壇場で涙をのんだ。それから20年を経た昨年(2016)3月には、釜石高野球部が21世紀枠で再びセンバツ大会に出場、初勝利を飾った。
友人との再会を喜び、晴れ着姿で写真に納まる新成人
そうした20年間には道路や港湾、発電など釜石発展につながる大事業が成し遂げられた一方、学校統合で教育環境は転換期を迎えた。震災後、生活環境が変化する中、全国から支援を受けながら少しずつ復興が進むまちを見つめ、高校卒業後、進学や就職先で努力を重ねてきた新成人。式典には、復興を願いながらそれぞれの夢に向かっている男性146人、女性129人の計275人が出席した。
会場は輝く笑顔であふれ、華やいだ雰囲気が広がった
震災犠牲者に黙とうをささげて開式。野田武則市長は「震災」「釜石人の誇り」「復興まちづくり」をキーワードに、「命の大切さを忘れず、命が輝ける人生を歩んでほしい。日本の近代化の先駆けとなった釜石の歴史に目を向け、釜石人としての誇りを失わないでほしい。新たなまちをつくる力となってほしい。未来は輝かしいものがある。自らの手でつかみ取ってください」と激励した。
新成人を代表し、釜石中、釜石高出身で消防士として釜石消防署に勤務する三浦祐規さん(19)が抱負を発表。震災直後、がれき撤去や学びの場の提供など復興を後押しした全国の支援者への思いや、昨年の台風10号で大きな被害を受けた岩泉町でのボランティア活動など近況を話し、「震災にあった私たちだからこそ、できることがある。自分の足で、責任で動けるようになった今、一歩踏み出し、私たち若い世代が先頭に立ち、さまざまな方法で恩返ししていきましょう」と呼び掛けた。震災で祖父母を亡くしたことが職業選択のきっかけの一つになったという三浦さん。消防士としてレベルアップし地域に恩返しする思いを一層強めた。
支えてくれた人に感謝しながら抱負を発表する三浦祐規さん
男女15人の有志は、支えてくれた家族や地域の人たちに感謝の気持ちを込め、虎舞を披露。「釜石市民歌」の斉唱で式典の幕を閉じた。終了後は、久しぶりに顔を合わせる仲間と話を弾ませ、スマートフォンで記念写真を撮りあったりするなど、成人式ならではの光景が広がった。
釜石の伝統芸能虎舞で式典を盛り上げた新成人有志
会場には、県建設業協会釜石支部青年部が12年に実施したタイムカプセルの企画に参加した釜石中、唐丹中出身者に、20歳の自分に宛てた手紙を渡すコーナーを設置。受け取って早速封を開けた新成人は「恥ずかしい」「泣きそう」「夢は変わったけど、元気」などと懐かしみ、「なんか、頑張ろう」と新たな歩みを進める力にした。
(復興釜石新聞 2017年1月11日発行 第553号より)
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