環境にやさしい「馬搬」を理解、釜石・大槌林業スクール〜林業へ応用 可能性探る、スピード 力強さに驚きの声


2016/12/28
復興釜石新聞アーカイブ #地域

県内でも志す人が増えてきているという「馬搬」。しっかり仕事をこなす馬に参加者も感心しながら見入った

県内でも志す人が増えてきているという「馬搬」。しっかり仕事をこなす馬に参加者も感心しながら見入った

 

 釜石市片岸町の釜石地方森林組合(久保知久組合長)が開く「釜石・大槌バークレイズ林業スクール」のオープンセミナーが18日、行われた。今年度最後のセミナーのテーマは、山林で切り倒した木を馬に引かせて搬出する「馬搬」。環境への負荷が少なく、近年見直され始めた昔ながらの技術に参加者が理解を深め、将来の林業への応用可能性を探った。 

 

 一般の申込者と同スクール通年コースの受講生35人が参加。午前は組合事務所で座学が行われ、森林環境リアライズ(北海道)の石山浩一専務と遠野市の馬搬馬方、岩間敬さん(遠野馬搬振興会事務局長)が講義した。森林施業のコンサルティングなどを行う石山専務は、人力によるやぶ出し、馬搬、流送から機械による木材搬出まで作業スタイルの変化の歴史を紹介。重機の導入が生産能力を高めた一方で、森林土壌の崩壊や土砂の流出、残木損傷など森林環境への影響も指摘されており、今後は生物多様性に配慮した森づくり、排水機能を持たせた作業道開設が必要だとした。

 

 午後は上栗林地区の山林に移動し、馬搬の実演見学会。岩間さん(38)が、飼育する日本輓系(ばんけい)種の雄馬(11)と伐倒木を土場まで運び出す作業を見せた。ばんえい競馬出身で6歳から山林での作業に従事する馬は、指示を的確に理解し、無駄のない動きでスギ材を引いて見せた。

 

 「歩けば歩くほど道ができ、馬も道を覚えるので、慣れてくると人が誘導しなくても自ら動いてくれる。2、3人のチームや数頭で交代しながらやれば、作業効率もさらにアップする」と岩間さん。馬搬のメリットとして、重機が入れない間伐現場などで馬の能力が生かされること、機械による二酸化炭素排出量の削減、馬耕など農業での応用―を挙げ、「馬と機械、それぞれの優れている点を生かし合うことが、将来の林業発展につながるのでは」と話した。

 

 20代から遠野市のベテラン馬方に師事し、30歳から馬搬を専業とする岩間さんは、馬搬文化の継承、普及活動に取り組み、欧州の馬搬コンテストでも上位入賞を果たす。「いろいろな角度から馬搬の有効性、可能性を考えてもらえる機会はありがたい。興味を持つ人が増え、県内の広がりにつながれば」と期待する。

 

 奥州市水沢区の和田風人さん(27)は、前回のセミナーを機に林業に興味を持ち、同胆沢区の林業事業体に1カ月前に入社したばかり。「馬のスピードや力強さに驚いた。適材適所、採算面などいろいろ考えれば、今後の林業の可能性も広がると思う」と貴重な学習経験を積んだ。

 

 同組合の高橋幸男参事は「いかに山を傷つけずに森林環境を維持していくかが、私たち林業者に求められること。馬搬の無くなった釜石地域で再度やってみることで、新しい林業、森林の在り方も見いだせるのでは。アイデアを出し合い、ハイブリッド式な方法を模索したい」と話した。

 

(復興釜石新聞 2016年12月24日発行 第549号より)

関連情報 by 縁とらんす
釜石地方森林組合
遠野馬搬振興会

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