地域福祉の充実誓い合う、民間の活動計画案 中間発表も〜釜石市社協50周年記念、200人参加し社会福祉大会


2016/11/22
復興釜石新聞アーカイブ #福祉

震災後、継続的に被災者支援活動を行う団体などへの感謝状の贈呈

震災後、継続的に被災者支援活動を行う団体などへの感謝状の贈呈

 

 地域福祉の充実強化へさらなる協働を誓い合う「釜石市社会福祉大会」が12日、ホテルサンルート釜石で開かれた。37回目となる今年は主催団体の一つ、釜石市社会福祉協議会の創立50周年を記念する大会となり、福祉功労者、子どもたちを対象とした福祉絵画・作文コンクール入賞者の表彰に加え、作家の落合恵子さんの記念講演が行われた。

 

 関係者約200人が参加。唐丹、栗林の両児童館の子どもたちが釜石市民歌を歌い、大会が幕を開けた。大会長を務める市社協の丸木久忠会長はあいさつの中で、「復興住宅の入居の進展、仮設住宅の集約化などで被災者の孤立防止や地域コミュニティーの再生強化への支援が一層求められる。生活困窮者の増加など多様な生活課題への取り組みも必要。住み慣れた地域に健康で安心して暮らし続けたいと願う住民のため、福祉に携わる者が一つになり積極的に福祉施策を推進していく」と決意を述べた。

 

オープニングで元気に市民歌を歌う唐丹、栗林児童館の子どもたち

オープニングで元気に市民歌を歌う唐丹、栗林児童館の子どもたち

 

 大会長表彰として、社会福祉事業と共同募金運動の功労者15人を表彰。在宅介護模範者1人に褒賞を贈った。また、震災以降、釜石の被災者を継続的に支援する市内外の団体などに市社協会長から復興支援感謝状を贈呈。災害ボランティアセンターへの職員派遣、募金活動やイベント開催による寄付、復旧・復興のための現地での作業など幅広い支援活動を行ってきた各地の社協やNPO法人など12団体、1人に感謝の気持ちを伝えた。一昨年2月に釜石市社協と災害時応援協定を結んだ東海市社協の久野久行会長は「震災は東海市民としても決して忘れることのない大惨事。11万人を超える東海市民の3分の1近くは釜石から来られた方。両市の絆を一層強くし、より良い社会のため手を取り合っていきたい」と謝辞に思いを込めた。

 

 「ぼくの・わたしのだいすきなひと」をテーマに作品を募集する幼児福祉絵画コンクールには今年度、市内12施設から195点の応募があった。父母や兄弟(姉妹)、先生などを描いた絵は、ほほ笑ましく色彩感覚に優れた作品が多く、個性豊かにのびのびと表現された8点が入賞作品に選ばれた。小・中・高9校から85点の応募があり8点が入賞した福祉作文コンクールは、どの作品も福祉について真剣に考え主張しており、「障害者への差別、偏見を無くして欲しい」「高齢者や障害者の力になりたい」など、それぞれの体験から芽生えたより良い福祉社会への願いが素直につづられている。両コンクールの入賞者も大会で表彰された。絵画の全応募作品と作文の入賞作品は12月2日から11日まで、イオンタウン釜石2階のイベントスペースで展示される。

 

 大会では、福祉関係者や住民による委員会で策定を進めている「釜石市地域福祉活動計画」案の中間報告も行われた。同計画は市の地域福祉計画策定に合わせ、市社協が主体となって初めて定める民間の活動・行動計画。「つながる釜石 豊かさ育む福祉コミュニティーの創造」を基本理念に、▽人づくり▽地域づくり▽必要に応じたサービス提供▽持続可能な仕組みづくり―を4つの柱に掲げる。来年2月までに計画案を策定し、意見を聞きながら3月中の策定を目指す。

 

落合恵子さん「人権とは誰の足も踏まないこと」

 

 釜石市社協50周年記念の社会福祉大会で講演した作家の落合恵子さん(71)は栃木県宇都宮市出身。明治大文学部英米文学科卒業後、文化放送に入社。ラジオのアナウンサーを経て、作家活動に入った。執筆だけでなく、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」などを主宰し、社会的弱者に寄り添った活動で知られる。東京家政大の特任教授も務める。

 

「生まれてきて良かったと思える社会を」と訴える落合さん

「生まれてきて良かったと思える社会を」と訴える落合さん

 

 この日は「いま、人権から…ひとりひとりが『主役』の社会を」と題して講演。「人種、性、年齢の差別、健常者中心主義から解き放たれた時、人は人権に近づく」とし、さまざまな差別意識が人権問題の根底にあることを示唆した。

 

 自身が人権に目を向けるきっかけは母の言葉だったという。戦争で愛する男性と離れ離れになってしまった落合さんの母は、親族らの猛反対を受けながらも出産を決意。父親のいない子どもを生むことが不道徳と言われた時代ゆえに、周囲の風当たりは非常に厳しかったというが、懸命に落合さんを育て、15歳になった落合さんにこう言ったという。「あなたは生まれついて差別される側になってしまった。これからの人生、される側の人と手をつないでいく生き方を見つけてほしい」。障害や特定の病を持つ人、部落などに対する多くの差別を例に挙げ、共に歩むことを願ったという。「母の言葉がその後の人生の宝物になった」と落合さん。

 

 学生には「人権とは誰の足も踏まないこと。誰にも自分の足を踏ませないこと。この場合の足は自分という存在そのもの。それを実行していく上に咲くのが人権という花ではないか」とも話したという。

 

 大会参加者は「人権は自分に引き寄せない限り絵に描いた餅。どこかの誰かのテーマではなく、自分に引き寄せて初めて見えるもの」とする落合さんの言葉に共感しながら、講演に聞き入っていた。

 

(復興釜石新聞 2016年11月16日発行 第538号より)

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