“復興”いわて国体 釜石開催競技開幕〜リオ五輪出場選手も参加 2020年東京五輪へも弾み、国体初のオープンウォータースイミングに78人


2016/09/14
復興釜石新聞アーカイブ #スポーツ

根浜海岸で行われた国体ウォータースイミング競技。気温31度、水温22度の好条件に恵まれ一斉にスタートする男子選手=6日午前10時05分

根浜海岸で行われた国体ウォータースイミング競技。気温31度、水温22度の好条件に恵まれ一斉にスタートする男子選手=6日午前10時05分

 

 希望郷いわて国体(第71回国民体育大会)の釜石市開催競技のトップを飾るオープンウォータースイミング(OWS)が6日、鵜住居町の根浜海岸特設会場で行われた。OWSは本国体で初めて正式競技として採用され、男子38人、女子40人が出場。2011年の東日本大震災による津波被害を乗り越え環境整備された同海岸で、各都道府県の精鋭が熱いレースを展開し、”復興国体”を強く印象づけた。

 

 OWSは海など自然の水域で長距離を泳ぐ競技で、五輪(10キロ)では08年の北京大会から正式種目となっている。「泳ぐマラソン」とも言われ、スピードや持久力、風や波、潮の流れを考慮したレース展開、駆け引きが求められる。国体では5キロ競技が行われた。

 

 開始式で野田武則市長は「復興は道半ばだが、関係者の尽力で立派な会場設営ができた。存分に力を発揮してほしい」と選手らを激励。本県代表の盛岡南高3年、桑添陸(17)=花巻市出身=、至学館大4年、石川舞花(21)=釜石市同=の両選手が選手宣誓し、大会が幕を開けた。

 

 この日は平田、唐丹小、大平中の全校児童・生徒300人余りが応援に駆け付け、選手に大声援を送った。選手らを間近で捉えた映像を映し出す大型ビジョンが会場内に設置され、臨場感を一層高めた。

 

応援に訪れた大平中生は学校伝統のソーランで選手らを歓迎

応援に訪れた大平中生は学校伝統のソーランで選手らを歓迎

 

 大会では、リオデジャネイロ五輪に出場した平井康翔(26)=千葉県=、貴田裕美(31)=群馬県=の両選手が男女それぞれのレースをリード。男子は、五輪選考レースで競った平井選手と宮本陽輔選手(埼玉県)が最後まで競り合い、会場を沸かせた。

 

 熱戦の結果、男子は平井選手(56分10秒8)、女子は貴田選手(1時間00分27秒5)が優勝し、オリンピアンの底力を見せつけた。本県代表の桑添選手は10位(56分54秒6)、石川選手は15位(1時間03分03秒1)だった。

 

大会を視察に訪れた鈴木大地スポーツ庁長官(中)とハイタッチし、競技に向かう桑添陸選手

大会を視察に訪れた鈴木大地スポーツ庁長官(中)とハイタッチし、競技に向かう桑添陸選手

 

 リオ五輪で日本人初の8位入賞の快挙を成し遂げた平井選手は「OWSのパイオニアとして絶対優勝しなければと思っていた。根浜の海は水温も良く、水もきれい。機会があれば合宿にも利用したい」と好感触。4年後の東京五輪について、「1年1年着実にレベルアップし出場権を獲得したい。目標は金メダルしかない」と言い切った。

 

 今大会では、釜石高の水泳部員約30人がボランティアとして大会運営を支えた。1年の田中凛さんは「同じ水の競技なので、見ていてすごく面白かった。地元開催で国体が身近に感じられた」と喜んだ。釜石市が募集した一般ボランティア約30人も協力。来月行われるトライアスロン、ラグビー成年を含め、137人がボランティア登録しているという。

 

 市国体推進課の菊池拓也課長は「前例が無い中での大会だったが、水泳連盟、選手にも好評価をいただいた。残り2競技に向けギアを入れ替え、最後まで無事に成功させたい。震災復興支援への感謝を表す大会でもあるので、そこも発信できれば」と意欲を新たにした。

 

 3位までの入賞者は次の通り。
【男子】
①平井康翔(千葉県)56分10秒8
②宮本陽輔(埼玉県)56分13秒4
③中島拓海(岐阜県)56分20秒7
【女子】
①貴田裕美(群馬県)1時間00分27秒5
②森山幸美(愛知県)1時間00分30秒9
③新倉みなみ(東京都)1時間00分37秒9

 

優勝した平井康翔選手(左から3人目)、貴田裕美選手(同4人目)ら男女の上位3選手

優勝した平井康翔選手(左から3人目)、貴田裕美選手(同4人目)ら男女の上位3選手

 

本県代表 桑添・石川選手(釜石出身)、国体を機にさらなる意欲

 

 本県代表として地元国体に挑んだ桑添陸選手と石川舞花選手。8位以上の入賞を目指していたが、目標まであと一歩及ばなかった。

 

 「地元開催、初の国体OWSということで、何とか点数を取りたかったが、入賞できず悔しい」と桑添選手。先頭集団についていき、持ち前の体力で最後にスパートをかける戦術だったが、3周目で離されてしまった。あきらめずについていくも、1周ごとにスピードを上げていく上位選手との差は縮まらず、入賞ラインには到達できなかった。

 

 「スピードと力で負けているのが原因。そこを鍛えて上を目指したい。東京五輪の2020年は大学4年。出たいですね」と桑添選手。国体種目にもなり、OWSの競技人口は増えているといい、「さらに難しくなっていくだろうが、同年代には絶対負けたくない」と闘志を燃やした。

 

 「釜石開催なので気合の入り方も違った。レース中はたくさんの応援が聞こえてきて、すごく力をもらった」と感謝するのは石川選手。小学2年から水泳を始め、高校3年ごろから長距離にも挑戦。地元釜石での国体OWS開催が決まり、「自分が出るしかない」と未知の世界に飛び込んだ。

 

ゴール後、関係者と談笑する石川舞花選手

ゴール後、関係者と談笑する石川舞花選手

 

 リハ大会で経験している根浜の海だが、「途中から波も出てきて、気付かないうちに流されて泳いでいたようだ」と競技の難しさを実感した。

 

 今月25日の日本選手権(10キロ)にも出場予定で、「不安もあるが、今回の反省を生かし悔いのないレースをしたい」と誓う。大会経験を積み、さらなる実力向上を目指す。

 

(復興釜石新聞 2016年9月10日発行 第519号より)

 

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