先人に鉄 宇宙とつながる釜石 天文学者2人が講演 唐丹「星座石、測量之碑」日本天文遺産認定記念で

「星座石と陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」日本天文遺産認定記念講演会=11日、TETTO
釜石市唐丹町に受け継がれる石碑「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」の日本天文遺産認定を記念した講演会が11日、市民ホールTETTOで開かれた。同遺産認定に係る現地調査を担当したNPO法人イーハトーブ宇宙実践センター理事の亀谷收さん(同遺産選考委員)、釜石南高(現釜石高)出身で広島大宇宙科学センター長の川端弘治さんが講演。釜石と宇宙をつなぐロマンあふれる話に約150人が聞き入った。
「星座石」と「陸奥州気仙郡唐丹村測量之碑」は江戸時代に全国を歩いて測量し、初の実測日本地図作成に至った伊能忠敬(1745-1818)が唐丹村(当時)で天体測量したことを示す遺産。両石碑は天文学を学んでいた地元唐丹の知識人、葛西昌丕(1765-1836)が建立した。伊能の業績を存命中に顕彰し、現存するものとしては全国唯一とされる。本年3月、公益社団法人日本天文学会が選ぶ「日本天文遺産」に認定された。認定は歴史的に貴重な天文学、暦学関連遺産の価値を広め、保全、活用を図るのが目的。
亀谷さんは認定の理由として、▽江戸時代末期(1800年代前半)、最先端の西洋天文学の知識が文化的中心地(江戸、仙台)から離れた唐丹にまで伝播していたことを明確に示す資料▽測量之碑の中に「地球の微動あらざらんか」という、西洋の学説を後世の人々に確かめてほしいとの記述がある▽伊能の存命中に作られた石碑が地域住民の保存活動により残っている―ことを挙げた。

星座石と測量之碑が日本天文遺産に認定された理由などを話した亀谷收さん
星座石に刻まれている緯度「北緯39度12分」は、伊能が1801(享和元)年9月24日に唐丹村で天体測量を行い、求めた値とされる。これは現在の地図と合致するが、葛西は「この緯度が不変なのか、あるいは西洋の学説にあるように地球の微動により変動するのかを後世の人々に解明してほしい」とのメッセージを石碑に残している。
亀谷さんは葛西の地球微動の問いかけに答える形で、緯度変化の要因として考えられる4つの可能性「歳差」「光行差」「章動」「極運動」について、自作の模型を示しながら考察した。自身の見解として示したのは、「1803年以降に存在が分かってきた章動と光行差が(葛西の言う)地球の微動に該当するのではないか」ということ。測量之碑は1814(文化11)年に建立されていて、「葛西が天文学を学んだ仙台でそうした知識を得ていた可能性は十分ある。緯度自体を変化させる極運動が発見されたのは1888年なので、こちらは想定していないと思われる」とした。

葛西昌丕が後世に解明を託した「地球の微動」について自身の見解を示す亀谷さん
同遺産認定は全国20例目、本県では3例目となる。亀谷さんは「岩手は星がきれいな“銀河県”。今回の認定で、多くの人にその重要性を知ってもらえれば」と願った。
超新星の研究をしている川端さんは、“近代製鉄発祥の地”釜石と深く関わる鉄を、宇宙に存在する元素からひも解いた。宇宙は138億年前にビッグバンで誕生したとされる。これで生まれたのが水素とヘリウムで、水素は現在、宇宙に存在する全元素の9割を占める。その他の元素は、水素のような軽い原子核どうしがくっついて重い原子核をつくる「核融合」という現象によって生まれた。重い原子核をつくるにはプラスどうしの電気の反発力に打ち勝って原子核を融合させる必要があるため、星の内部のような高温、高圧状態が必要。「炭素、酸素から鉄までの元素は星の中での核融合反応でつくられてきた。鉄は原子核の中で最も安定な元素で、核融合の終着点」と川端さん。炭素や酸素などの重元素ができたからこそ、惑星や生命の誕生につながったことを明かした。

「ビッグバンから<鉄>へ:宇宙と釜石のつながり」と題した川端弘治さんの講演
一方、地球に限って見ると一番多い元素は鉄。地球を形作った物質の3分の1は鉄で、その多くは地球の中心部に存在する。地表付近にある鉄は太古の海が酸化して析出した鉄鉱床。これが隆起した地層があるのが釜石で、「鉄鉱石が採れる所は、ほとんどが海の底だった所。釜石鉱山もそう。宇宙から巡り巡ってきている」と話した。

釜石の鉄鉱石の大元は宇宙でできた鉄元素。宇宙の進化とのつながりに驚き
川端さんは講演の中で、国立天文台のプロジェクトが開発した4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka(みたか)」の映像も上映。地球から観測可能な太陽系、天の川銀河、宇宙の大規模構造をリアルタイムに可視化するソフトで、広大な宇宙を紹介した。人間が肉眼で見えている星は1000光年ぐらいまで。10億光年スケールで見た銀河の分布は銀河どうしが連なり、網の目状の姿を見せている。

4次元デジタル宇宙ビューワー「Mitaka」の映像も上映。地球から観測されている星や宇宙の構造を知ることができる

興味深い講演に拍手を送る来場者
来場者は普段じっくり触れることのない宇宙の世界に興味をそそられながら、講師2人の話に耳を傾けた。講演後は星座石と測量之碑の管理者、本郷文化財愛護少年団育成会の小池直太郎会長がこれまでの保全活動や今回の遺産認定の住民の受け止めを紹介。認定以降、現地への来訪者が増えていることも話し、さらなる知名度アップに期待を寄せた。

本郷文化財愛護少年団育成会の活動などについて紹介した小池直太郎会長(写真左上)。市文化財保護審議会の藤原信孝会長は講演への感謝の気持ちを伝えた(同下)

ホール前のロビーでは関連資料の展示も行われた

釜石新聞NewS
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