震災後の子ども支援 BS岩手連盟が報告書に 釜石第2団の末永正志さん 自費出版で関係先に寄贈


2026/06/19
釜石新聞NewS #地域

ボーイスカウト(BS)が行った東日本大震災の支援活動を報告書にまとめた日本BS岩手連盟前副連盟長の末永正志さん

ボーイスカウト(BS)が行った東日本大震災の支援活動を報告書にまとめた日本BS岩手連盟前副連盟長の末永正志さん

 
 東日本大震災後に子どもの遊び場などを提供し、心のケアに努めてきた日本ボーイスカウト(BS)岩手連盟(南部利文連盟長)は、県内で実施した活動を報告書にまとめ、このほど関係先に寄贈した。沿岸被災地での活動を主導した前副連盟長の末永正志さん(76、釜石市)が、震災15年を機に自費出版。災害時に対応が遅れがちな「子どもの心のケア・居場所づくり」が、将来にわたって効果的に進むようにとの願いが込められている。
 
 報告書は全36ページ。発災直後から復旧・復興期に至る支援活動について、末永さんが持つ資料を基に10年間の活動記録を掲載した。青少年の健全育成に取り組むBSは組織の横のつながりを生かし、発災直後から衣類や文房具、辞書などの支援物資を被災地に届ける活動を展開。地元で募金活動を継続し、長期にわたり被災地に支援金を届ける県連盟もあった。
 
震災から10年間のBSによる支援活動を写真やデータを交えて掲載した報告書

震災から10年間のBSによる支援活動を写真やデータを交えて掲載した報告書

 
BS埼玉県連盟は各地で募金活動を行い、被災3県の連盟に支援金を届けた。写真は2012年11月、釜石市で行われた贈呈式

BS埼玉県連盟は各地で募金活動を行い、被災3県の連盟に支援金を届けた。写真は2012年11月、釜石市で行われた贈呈式

 
 2011年夏、被災の悲しみを乗り越える一助となるようにと、被災地域から離れた県内陸部で野外キャンプを行う「アウトドアチャレンジ」事業がスタート。釜石、大槌両市町の小学4~6年生を対象に1泊2日の日程で、野外ゲームや乗馬、小動物との触れ合いなどを通じて心身のリフレッシュを図ってもらった。実施前には県実行委のメンバー、ボランティアの大学生らが臨床心理士や小児科医から“グリーフケア”を学ぶ事前研修も行い、受け入れ体制を整えた。BS日本連盟が主催した同キャンプは後に岩手連盟や県内の自然活動団体で組織する実行委に移管され、計10回行われた。
 
滝沢市で行ったグリーフケアキャンプ。自然と親しみながら心身のリフレッシュを図るプログラムが用意された=写真提供:末永正志さん

滝沢市で行ったグリーフケアキャンプ。自然と親しみながら心身のリフレッシュを図るプログラムが用意された=写真提供:末永正志さん

 
 沿岸被災地では釜石第2団が被災から2カ月後の5月に始動。仮設住宅に入居した人たちに花苗をプレゼントしたほか、津波被害を受けた釜石駅前の花壇に花苗を植える活動を行った。同年10月には遊び場を失った子どもたちのために、釜石市のシープラザ遊に「遊びの広場」を開設。BSが得意とする野外活動をアレンジしたさまざまな遊びを提供し、訪れた子どもたちが楽しい時間を過ごした。同広場は山田町や大槌町などでも開催され、2019年まで続けられた(計13回)。「子どもの心のケアはもちろんだが、私たちが一定時間子どもを預かることで、親たちは用足しや被災家屋の片づけなどができた。子どもの楽しそうな様子や笑顔を見られることは家族の喜びにもつながった」と末永さん。
 
釜石市のシープラザ遊に開設した「遊びの広場」。BS活動を生かした丸太切り(左上)、ツイストパンづくり(左下)、ツリークライミング(右)=2012、13年5月

釜石市のシープラザ遊に開設した「遊びの広場」。BS活動を生かした丸太切り(左上)、ツイストパンづくり(左下)、ツリークライミング(右)=2012、13年5月

 
竹馬などの昔遊びコーナーも。多くの子どもたちが遊びに夢中になった

竹馬などの昔遊びコーナーも。多くの子どもたちが遊びに夢中になった

 
 釜石第2団では震災津波で13世帯が被災。元団員1人が犠牲になった。末永さんも自宅や車を流されたが、BSの誓いにある「いつも他の人々を助けます」という率先援助の精神に突き動かされ、被災した子どもたちの支援活動に奔走してきた。その中で感じたのは、震災で負った心の傷の深さ。「発災直後は自分の気持ちを抑えておとなしくしていた子どもが、時間の経過とともに(ストレスなど)背負っているものを抱えきれなくなり、思いも寄らぬ行動や体調不良に陥るケースがあった」。災害時の心のケアの難しさ、継続的な支援の必要性を痛感する瞬間だった。
 
 近年、各地で多発する大規模災害。昨年10月、BS日本連盟は都道府県連盟に対し、「災害対応タスクチーム」に関する指針を出した。平時から人材確保や活用可能な資機材のリスト化、連絡網の整備を進め、災害発生時には被災状況の把握や発生規模に応じた対応の検討、応援受け入れなどをスムーズに行えるよう通達した。こうした背景もあり、末永さんは報告書作成を決断。「自分たちの経験を広く伝えることで、災害時の子ども支援がより良い形で進めば。国もようやく災害時の子どもの居場所づくりに取り組み始めた。国や自治体、災害ボランティア団体などにより早期にシステム化を図ってほしい」と願う。
 
支援への感謝を示し、報告書を「今後の参考にしてほしい」と話す末永正志さん。災害時の「子どもの居場所づくり」のシステム化を願う

支援への感謝を示し、報告書を「今後の参考にしてほしい」と話す末永正志さん。災害時の「子どもの居場所づくり」のシステム化を願う

 
 報告書は釜石第2団OBの印刷協力、末永さんの製本で140部を作成。支援を受けた他県連盟や各団体、自治体などに配布している。

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