2025年スタート 家族、親族、仲間で迎える新年 集う喜びひしひしと 各所の初詣にぎわう
2025年が幕を開けた―。国内では能登半島地震発生から1年が経過。海外ではロシアの侵攻を受けるウクライナでの戦争が4年目に入ろうとしている。頻発する自然災害に長期化する戦争…。心穏やかに暮らせる日々のありがたみをより強く感じさせる中での新年スタートとなった。釜石市内では年末年始を古里で過ごそうと帰省した人たちが多く見られ、正月三が日、各地の神社や寺は初詣客でにぎわった。
栗林町沢田・八幡神社 本殿建て替え後、初の年越し 地域住民らが参拝
昨年建て替えられた八幡神社本殿の前で参拝する家族連れ=元日午前0時20分ごろ、栗林町沢田
昨年6月、本殿の建て替え工事が完了した栗林町沢田の八幡神社は初めての年越しを迎えた。元日午前0時を回ると地域住民らが参拝に訪れ、新しい本殿の前でさい銭をあげて手を合わせた。
近くに住む小林康生さん(36)は一家6人で参拝。バレーボールに励む小中高生の娘3人の活躍、次女の高校受験合格などを祈願した。箱崎町で東日本大震災津波に遭い、仮設住宅での生活を経て栗林町に自宅を再建。「こちらに来て10年以上になる。地域の方々がやさしく、とても暮らしやすい。生活も落ち着いた」と新天地での人生を歩む。願うは“子どもたちの健やかな成長”。一家の大黒柱として家族を守る。
沢田八幡神社の新本殿(写真上)。前の建物に近い形で改築された。本殿は参集殿より高い場所にある(同下)
同神社は文政年間(江戸時代後期)の建立。参集殿から続く階段を上った先に別棟の本殿がある。木造の本殿は1955年に屋根のふき替え(かや→瓦)のみが行われていたが、本体の老朽化が進んだため、地元町内会の沢田新生会(川崎浩一会長、98世帯)が中心となって建て替えを計画。地域住民や縁故者、企業から寄付を募り、一昨年春に工事に着手。地元産のケヤキ、ヒノキ材を使い、屋根は銅板で仕上げた。
かしわ手を打ち、新年の無事などを祈る地域住民(写真上)。参集殿には神社の歴史を物語る写真が飾られている(同下)
工事を担当した菊池建設(橋野町)の菊池浩代表取締役(60)は「若い職人にとってもいい経験で、技術の継承にもつながった」と貴重な機会を喜ぶ。栗林町民でもある菊池代表は元日の初詣一番乗りで、川崎会長(61)らと新年のあいさつを交わした。川崎会長は「昨年秋の祭りは本殿改築を祝って盛大に行われた。新しい年が災害や事故のない穏やかな1年になれば」と地域の安全を願った。
海面照らすまばゆい光 初日の出は洋上の雲から 明るい1年に期待
仮宿漁港から望む2025年の初日の出=元日午前7時27分ごろ
晴れ予報で「初日の出」への期待が高まった元日朝の釜石。市内でも数少ない海面から昇る初日を拝める場所、箱崎町仮宿地区には、午前6時52分の日の出時刻に合わせ、家族連れなどが訪れた。漁港を臨む集落の高台から日の出を待つも、洋上に雲がかかり、なかなか太陽が顔を出さない。同7時14分ごろ、雲の隙間から一時、陽光が差すも、再びお預け。雲の上部から太陽が見え始めたのは同7時25分ごろで、数分の間に漁港内に神々しい光の帯が延びた。
午前7時14分ごろ、雲の間から陽光が漏れる。集まった人たちは今か今かと日の出を待つ
刻一刻と変化する光景に目が離せない。雲の上部から光が差し込むと見物客に笑みが広がった
いとこ同士という同地区出身の女性4人は愛犬と初日の出を拝んだ。小学5年の臺彩華さん(11)は「めっちゃきれい。いい気持ちで新しい年を始められる」とにっこり。最上級生となる今年は「1~5年生を引っ張っていけるような6年生になりたい」と頼もしさを見せ、「運動会のリレー選手になれるよう頑張る」と目標を掲げた。福島県から帰省した高彩世さん(23)は「この4人で初日の出を見るのが恒例。今年も見られた」と喜びの表情。昨年は保健師となり、社会人としての第一歩を踏み出した。「国家試験に初めての仕事…。何とか乗り越えてこられた。2年目の今年も甘えなく」と気を引き締める。原動力は常に心の中にある古里“仮宿”。「震災で一時期、減った住民もだいぶ戻ってきた。仮宿は自然豊かで、おっとりした感じが好き。一番落ち着く場所」と愛着をにじませた。
初日の出にパワーをもらった仮宿出身の女性ら。「今年も1年がんばるぞ!」
「巳」にちなんだ墨絵で活力届ける・日高寺
「今年の一絵」を囲む参拝者の表情はにこやか=元日午前、日高寺
礼ヶ口町の日高寺(菊池錬城住職)では元日、新春祈祷(きとう)に続き、「今年の一絵」と題した墨絵の書き初めが披露された。約2メートル四方の紙に描かれたのは、干支(えと)の「巳(み)」にちなんだヘビ。親しみを感じる表情や力強い筆致に、参拝者らは「きっといいことあるね」と笑い、活力を得た。
同寺には毎月1日に参拝する「月参り」という風習がある。自由参拝としていて、この日の祈祷もその延長で行われた。40人ほどが心身を清めるとともに、新しい年の始まりにあたって家族の健康や仕事の成功など、それぞれの願いを胸に手を合わせた。家族7人で訪れた市内の鈴木照子さん(71)は巳年生まれ。墨絵を見つめながら、「家族みんなが健康であれば。力強い絵のように、じっくり構えて目標を達成させたい」と心の奥にある思いをそっと口にした。
菊池錬城住職は心身を清める「加持祈祷」を行った
「春の海」の音色に合わせて墨絵を描く菊池住職(右)
「皆にご利益があるように」と、一筆ごとに気持ちを込めて絵を仕上げた菊池住職。「ヘビは金運をもたらす存在とされるが、即効性はなく、粘り強くいこうという意味もある。例えば、ヘビは獲物をとらえても時間をかけてのみ込む」とした上で、「じっくり取り組んで好機を待つ。辛抱強く続けることで、希望したものが手に入る」と、心の持ちようについてヒントを示した。
釜石大観音に初詣客続々 正月3が日、天候にも恵まれ約8千人が拝観
初詣客でにぎわう釜石大観音=観音像入り口、元日午前11時35分ごろ
市内最大の初詣スポット、大平町の釜石大観音には市内外から大勢の初詣客が訪れた。今年は曜日配列の関係で5日までの正月休みとなった人も多く、分散参拝の傾向に。客足は4、5の両日も続いた。正月3が日で昨年並みの約8千人が参拝に訪れた。
おおみそか午後10時に開館。年越しの午前0時前後、初日の出を拝める元日午前7時前後を中心に境内は多くの人でにぎわい、駐車場は午後3時半ごろまでほぼ満車状態が続いた。今年はコロナ禍明け2年目の正月で、帰省した家族もさらに増えた印象。訪れた人たちは昨年の加護に感謝しながら手を合わせ、今年1年の無事や達成したい願いを胸に祈りをささげた。
子どもたちもきちんと手を合わせてお参り。「今年の願いは??」
無事に新しい年を迎え、笑顔満開の家族連れ。境内では観音像や海をバックに記念撮影する姿が見られた
参拝後はお守りやお札を買い求めたり、おみくじを引いたりと正月ならではの光景が広がった。青空に映える白亜の観音像、眼下に臨む釜石湾の絶景をバックに記念撮影する人たちも。境内には市内外のキッチンカー4台も出店し、温かい飲み物や食べ物が好評だった。
釜石市の佐々木貴幸さん(43)は家族5人で初詣。「昨年は子どもたちのクラブ活動や習い事の応援で忙しかった」と振り返り、「今年も家族みんな元気でいられますように」と願いを込めた。中学3年の長男柚貴さん(15)は「修学旅行で行った東京ディズニーシーが楽しかった」と昨年の思い出を話し、「今は高校進学に向けて受験勉強の真っ最中。合格して思い出深い高校生活を送りたい」と意気込んだ。
神奈川県から釜石の実家に帰省したディアズ麻紀さん(26)は米国出身の夫、長女、実弟と参拝。夫の仕事の関係で近い将来、米国に移住する見込みで、「最後の機会になるかもしれないので」と足を運んだ。「家族で健康に過ごせる1年に」と手を合わせ、長女(2)の成長を楽しみにした。つかの間の正月休み。「主人も釜石が大好き。心も体もリラックスできています」。長女の出産時はコロナ禍で、家族の立ち会いができなかった。「みんなで普通に同じ場所にいられることは本当に幸せなこと」と麻紀さん。
引いたおみくじに見入る家族連れ(写真左上) 釜石湾の絶景も楽しむ(同下) 仏舎利塔も青空に映えて…(同右上)
同市を代表する観光スポットでもある釜石大観音。小野寺俊雄係長は観光客数について、「コロナ禍明けで一気に伸びたが、以降は横ばい。昨年は安産祈願やお宮参りが増え、少子化の中でも明るい兆し」と喜ぶ。新年を迎え、願うのは世界の平穏。長引く戦争で多くの命が失われている海外の現状を憂慮し、「観音様が建てられた目的の一つが世界平和。その願いが世界に届けば」と話した。
釜石新聞NewS
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