ライフセービングを競技で 釜石・根浜海岸で大会初開催 スキル向上、次世代の人材育成へ
根浜海岸で開かれた第2回さんりくリアスカップライフセービング競技大会
海水浴シーズンを中心に水辺の事故防止活動に尽力するライフセーバー。その技術向上や活動人材育成を目的とした大会が9月29日、釜石市鵜住居町の根浜海岸で開かれた。「さんりくリアスカップライフセービング競技大会」(同実行委主催)と銘打った大会は、昨年の宮城県気仙沼市での開催に続き2回目。関係者は「未経験者にも競技に触れてもらい、東北のライフセービング活動の裾野を広げていきたい」と大会継続に意欲を示す。
本大会長を務めた地元、釜石ライフセービングクラブの菊池健一会長は「今シーズンの海水浴監視活動を無事故で終えられたことに敬意を表したい。この大会は日ごろの活動成果を試すとともに各クラブ間の交流の深める場でもある。自分の力を出し切って楽しんでほしい」と参加者を歓迎した。
競技には岩手、宮城両県から7~58歳の男女35人が参加。日本ライフセービング協会の派遣スタッフがコース設定や審判で協力した。競技は砂浜と海上で行うものがあり、年代、男女別に16種目が用意された。砂浜では70メートルダッシュを競う「ビーチスプリント」、ゴールに背を向けたうつ伏せ体勢からスタートし、ゴールにあるフラッグ(バトン)を奪い合う「ビーチフラッグス」、400メートルの海岸線を走って往復する「ビーチラン」、海上では約200メートルのコースを泳ぐ「サーフレース」、救助や監視に使うボードに乗って同コースを泳ぐ「レスキューボードレース」、小中学生の「ニッパーボードレース」が行われた。リレー競技もあった。
70メートルの砂浜を走り、速さを競うジュニア男子ビーチスプリント
小中学生対象のニッパーボード(レスキューボードの縮小版)レース
一般女子レスキューボードレース。波打ち際の高波を乗り越えて沖へ。設定されたコースを回り砂浜へゴールした
海上で競技する選手に声援を送る釜石ライフセービングクラブのメンバーら
盛岡ライフセービングクラブに所属する宮古市の上野杏華さん(10)は体験会を機に昨年から競技を始めた。「ボードに乗って泳ぐのが楽しい」と話し、本大会のニッパーボードレースでは1位を獲得。海にたくさん通って練習を重ねているといい、9月上旬に行われたジュニアの全国大会ではボード競技で決勝に進んだ。「もっと速くなりたい。ライフセーバーの活動にも少し興味がある」と向上心を見せる。
東日本大震災後、東北のライフセービング関係者は事故や災害から人命を守る同活動を根付かせようと、ジュニアの大会に着手。コロナ禍による休止を経て、幅広い年代が参加できる同大会を立ち上げた。大きな目的の一つが未経験者にも競技に触れてもらい、ライフセービングの魅力や意義を知ってもらうこと。今大会には昨年よりも多い未経験者のエントリーがあった。
岩手医科大(矢巾町)に通う麻田恭大さん(26)は同大水泳部の友人と初参加。「海での競技は初めて。波に合わせて泳ぐのがきつかった」と息を切らした。実際に活動するライフセーバーと接し、「体力も体格もすごい。自分はまだ泳ぐだけで精いっぱいだが…」と苦笑い。それでも、いち早く人命救助にあたれるライフセーバーに魅力を感じ、「医師と両立できれば、救命の現場でもより役立つことができそう」と話した。
ゴールに背を向けたうつ伏せ体勢からスタートし、競技者より少ない数のフラッグ(バトン)を奪い合う「ビーチフラッグス」
日ごろから訓練を重ねるライフセーバーは迫力のスピード!
競技未経験者も全力でバトンの争奪戦。ビーチ競技の面白さを体感
毎年、夏の海水浴シーズンは、全国各地で水辺の事故により命を落とす人が後を絶たない。気仙沼ライフガードの浦健太さん(32)は「ライフセーバーがいないところで事故が起きているというニュースも聞く。全国的に(海水浴期間中)ライフセーバーが常駐していない海岸はまだまだ多く、活動人員の拡大が望まれる。こうした大会を通して子どもたちが役割を知り、大人になった時に活動に加わってくれたら」と期待を寄せる。
今回、大会開催地となった根浜海岸はトライアスロンやオープンウオータースイミング(遠泳)の大会が開かれてきた場所でもあり、ライフセーバーは競技者の安全確保にも大きな力を発揮してきた。近年は海遊びイベントへの協力などさらに活躍の場を広げている。
トライアスロン、オープンウオータースイミングに次ぐ新たなスポーツ大会会場となった根浜海岸
ライフセービングの基本的スキル「泳ぎ」を競うサーフレース。リレーも行った
釜石ライフセービングクラブの事務局を務める中田深雪さん(43)は「ライフセービングというと人命救助に目が向きがちだが、私たちの活動のメインは事故を未然に防ぐこと。出動体制は整えているが、まずはパトロールの強化や事故防止の啓発で最悪の事態にならないようにすることが大事」と活動趣旨を強調。競技大会などで敷居の高さを払拭しながら、「興味のある方は臆せず入ってきてほしい。救助技術などは訓練で身に付く。ぜひ一緒に活動を」と呼び掛ける。
一般男子レスキューボードレース。ゴール間近の先頭争い
砂浜の緑の旗がゴール地点。計測タイムを記録し順位が確定。力を尽くした競技者を砂浜のメンバーが温かく迎える
釜石新聞NewS
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