世界遺産で楽しむ春の休日 橋野鉄鉱山八重桜まつり 来年の登録10周年へ弾み


2024/05/20
釜石新聞NewS #観光

はしの四季まつり第一弾「橋野鉄鉱山八重桜まつり」=12日

はしの四季まつり第一弾「橋野鉄鉱山八重桜まつり」=12日

 
 釜石市の世界遺産「橋野鉄鉱山」で12日、春恒例の八重桜まつりが開かれた。地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催。高炉場跡に向かう道路沿いの並木の花は終盤だったが、濃桃色の花が青空や新緑とともに美しい景観を生み出し、来訪者を出迎えた。同鉄鉱山インフォメーションセンター駐車場では餅まきや豚汁のお振る舞い、産直の出張販売などがあり、約400人が楽しんだ。
 
 同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には同振興協が新たな植樹を行い、若木も順調に花を咲かせている。同祭りは地域活性化などを目的に2007年にスタートした。東日本大震災(11年)による休止を経て、12年からは世界遺産登録を後押ししようと「橋野高炉跡」の冠をつけて開催。餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡見学など今の形が定着した。登録後の16年から「橋野鉄鉱山」に祭り名を改称している。新型コロナ感染症の影響で20年から3年間は中止した。
 
 今年も釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、会員29人)の案内で巡る高炉場跡の見学ツアーから開始。3人のガイドがグループごとに見学希望者を引き連れ、史跡エリアに向かった。ガイドらは鉄鉱山の成り立ち、現甲子町大橋で洋式高炉による国内初の連続出銑成功後、橋野で製鉄が始まった経緯、製鉄の方法、操業時の生産規模などを説明。橋野の3基の高炉は現存最古で、「明治日本の産業革命遺産」(8県11市23構成資産)の一つとして世界遺産登録されたことなどが伝えられた。
 
釜石観光ガイド会会員の説明を聞きながら高炉場跡に向かう

釜石観光ガイド会会員の説明を聞きながら高炉場跡に向かう

 
沿道では八重桜とツツジが競演!春はさまざまな花が楽しめる

沿道では八重桜とツツジが競演!春はさまざまな花が楽しめる

 
第一高炉跡で当時の操業の様子を聞く参加者

第一高炉跡で当時の操業の様子を聞く参加者

 
 餅まきには子どもから大人まで大勢の人たちが集まった。同振興協の菊池会長(69)が歓迎のあいさつ。地域の代表がトラックの荷台に上がり、約1000個の紅白餅をまいた。毎回好評の豚汁のお振る舞いには長い列ができた。振興協女性部が腕を振るう豚汁は山菜のワラビ、ウルイ、フキも入り具だくさん。来場者はおにぎりなどと一緒に味わった。会場内では昨年に続き、大槌町のバンド「ZENBEY絆」が演奏。今年は釜石市の女形舞踊・尚玉泉さんも共演し、まつりを華やかに彩った。
 
お楽しみの餅まき。紅白の餅約1000個がまかれた

お楽しみの餅まき。紅白の餅約1000個がまかれた

 
「こっちにも~」と手を伸ばしてアピール

「こっちにも~」と手を伸ばしてアピール

 
長蛇の列ができた豚汁のお振る舞い

長蛇の列ができた豚汁のお振る舞い

 
ZENBEY絆(写真右上)、尚玉泉さん(同左上)の歌と踊りで会場はにぎやかに

ZENBEY絆(写真右上)、尚玉泉さん(同左上)の歌と踊りで会場はにぎやかに

 
 同市の佐々木章斗君(8)は「豚汁もおいしかったし、歌も聞けた。きれいな花に囲まれて気持ちいい」とにっこり。母雅子さん(44)は「コロナも明けて、家族や親族など大人数で出かけられるようになった。まちの活気も戻ってきたようでうれしい」と声を弾ませた。同市甲子町から足を運んだ女性(37)は「今年は全般的にサクラの開花が早かったので、ここも終わっているかなと思って来たが、こんなに咲いているとは。青空にも映えてきれい。この後、並木の下を散歩して帰ります」と心を躍らせた。
 
 市北西部に位置する橋野町。鉄鉱山のある青ノ木地区は遠野市につながる笛吹峠の上り口にあり、冬から春先は市街地よりも気温が低い。サクラも市内では遅い開花だが、近年は地球温暖化の影響が顕著。10年ほど前までは5月下旬に見ごろを迎えていたが、最近は中旬までには満開になる年が多い。ただ、急激な高温や降雪に見舞われるなど極端な気象の年もあり、開花や満開時期の予想が難しく、主催者は祭り開催日の設定に頭を悩ませる。今年は6~7日ごろに満開になったという。
 
八重桜の木の下で豚汁を味わう家族連れ

八重桜の木の下で豚汁を味わう家族連れ

 
子どもも大人も祭り名物の豚汁に舌鼓

子どもも大人も祭り名物の豚汁に舌鼓

 
 同祭りでは震災後、甲子町から会場まで無料送迎バスが運行されている。今年は大型2台、中型1台が運行され、約90人が利用。市内で働く外国人の若者も10数人訪れ、日本の春を満喫した。
 
 橋野鉄鉱山は来年、世界遺産登録から10周年を迎える。釜石観光ガイド会の川崎孝生副会長(83)は「市民でもまだ(現地に)来たことがないという人もけっこういる。地元の世界遺産の価値を知り、誇りに思ってほしい」と願い、「ガイド会としても心を込めたお迎え、お見送りを大事にし、限られた時間でポイントを押さえ説明できるよう個々のスキルを高めていきたい」と節目の年を見据える。
 
ガイドの説明を聞きながら見学すると同所の価値がよく分かる

ガイドの説明を聞きながら見学すると同所の価値がよく分かる

 
もみの大木の間の鳥居を抜けると山神社跡。石碑などが残る

もみの大木の間の鳥居を抜けると山神社跡。石碑などが残る

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