釜石市の震災記録誌「撓まず屈せず」完成 復興の過程、教訓「未来の指針に」


2023/11/17
釜石新聞NewS #防災・安全

復興の道のりをまとめた釜石市震災誌「撓まず屈せず」

復興の道のりをまとめた釜石市震災誌「撓まず屈せず」

 
 釜石市は、東日本大震災を後世に伝える震災誌「撓(たわ)まず屈せず」を発刊した。野田武則市長、編さん委員会委員長の齋藤徳美岩手大名誉教授(地域防災学)が10日、市役所で完成を報告。被害状況、復旧・復興の施策や事業、課題をまとめた震災誌を手に、「未来の子どもたちへのメッセージであり、これから災禍に遭うかもしれない地域への教訓。災害の備え、応急・復旧対応の指針として大いに生かしてほしい」と望む。
 
 震災誌はA4判カラーで332ページ。▽いのちをつなぐ▽まちづくり▽くらし▽なりわい▽安心と安全―などの9部構成で、発災当日からの市民らの行動や復旧・復興の過程を記す。さらに、「災害対策本部の初動対応」「復興まちづくり基本計画の策定」「心のケア」といった61の項目ごとに事実、市に求められた役割、具体的な活動と結果、教訓を記述。有識者のメッセージやトピックス、市民の声も盛り込み、より理解が深まるよう工夫した。
 
市民の証言も教訓として添えられている

市民の証言も教訓として添えられている

 
 編さん委員会は2021年11月に発足し、市の震災検証に関わった大学教授や被災地域の住民、発災時から対応にあたってきた元市職員らで構成。市の庁内検証委員会が年度ごとにまとめてきた記録誌を基にまとめ、22年度内の完成を目指していた。発災から復旧、復興の歩みを体系的に記録し、得られた教訓を今後に生かしてもらうべく内容を精査。会合での協議、各種作業に時間を要し発刊時期が遅れていたが、今年10月にようやく完成した。
 
 第9部「未来のいのちを守るために」には、市内で1000人を超える犠牲者を出した検証、震災前から続く小中学校の防災教育の結果・検証などを記載。「災禍を繰り返さないために検証が不可欠。減災と復興の在り方に議論を続けて進化を」と教訓を示す。野田市長は「事実関係に加え、教訓もしっかり精査されている。ただ、教訓に関してはまだまだ議論の余地がある。読んだ人が考え、得られるものをつけ足していってもらいたい」と委ねる。
 
完成を報告する野田市長(右)と齋藤委員長

完成を報告する野田市長(右)と齋藤委員長

 
 「12年という一つの区切りにまとめができたのは非常に価値があった」と齋藤委員長。「自然災害は必ず発生する。災禍を繰り返さないためには、とにかく逃げる」と訴え続ける。震災では避難という基本に対する認識に個人差があったのか、大きな被害につながったとも指摘。「普段から、非常時の体制づくりを」と求める。そして、この震災誌に願いを込める。「未来への指針としてほしい」。巻末資料に索引がついており、市民の振り返りだけでなく、他市町村も参考にしやすい形を取り入れた。
 
 300部を発行し、市内の学校や図書館、国や岩手県の関係機関、復興応援を受けた自治体などに配布する。市役所(震災検証室)や市の出先機関(釜石地区を除いた生活応援センター)で販売(1部2000円、税込み)も。市ホームページでも無料で公開する。

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