震災復興支援に長期尽力「ボブさん、ありがとう」 被災者らが再来日歓迎のジャズコンサート


2023/09/18
釜石新聞NewS #地域

ボブ・ゲラステッドさんの来釜を歓迎するジャズコンサート=新生釜石教会

ボブ・ゲラステッドさんの来釜を歓迎するジャズコンサート=新生釜石教会

 
 東日本大震災後、釜石市に暮らしながら2019年まで被災者支援に尽力したボブ・ゲラステッドさん(67)=米フロリダ州在住=が10日、同市を訪問。大町の日本キリスト教団新生釜石教会(柳谷雄介牧師)で市民らの歓迎を受けた。仮設住宅入居時に支援を受けて以来、交流を続ける同市野田町の澤田和三さん(69)が、音楽仲間とゲラステッドさんが好きなジャズを演奏。野田武則市長も駆け付け、長きにわたる支援に対し感謝の気持ちを伝えた。
 
 ゲラステッドさんは今回、北海道への用事で来日。約7年半暮らした釜石市にも足を延ばした。同教会の日曜礼拝に出席。礼拝後、ピアノでバンド活動を続けてきた澤田さんが仲間2人と、ジャズのスタンダード「ムーンライト・セレナーデ」「スターダスト」など7曲を演奏。支援への感謝と再会の喜びを伝えた。
 
ピアノ、ベース、ボーカルの3人でジャズを演奏

ピアノ、ベース、ボーカルの3人でジャズを演奏

 
スマホカメラを向けながら演奏を楽しむボブ・ゲラステッドさん(左)

スマホカメラを向けながら演奏を楽しむボブ・ゲラステッドさん(左)

 
 ゲラステッドさんは1978年に初来日。日本語を勉強しながら神奈川県で2年ほど暮らした後、米国に戻り神学校に入った。牧師となり、91年に家族とともに再来日。日本バプテスト宣教団の協力牧師として京都府などで暮らしていた。2011年の東日本大震災発生後、同団が結成したボランティア組織「東北ケア」の一員として被災地で活動。釜石市には同年8月に入り、米国から届く支援物資を被災者に配布したり、仮設住宅で応援イベントを開くなど物心両面で支え続けた。12年3月、共に活動してきた妻グロリアさんと同市に移住。各種支援が減っていく中、生活困窮者に衣類や食料の支援を続け、釜石・大槌の各所でお茶っこの会を開くなど息の長い活動を行った。19年10月まで釜石にいたが、高齢の義母の世話のため母国に戻った。
 
2012年5月に平田第6仮設団地で開かれた東北ケアの支援イベント=写真提供:澤田和三さん

2012年5月に平田第6仮設団地で開かれた東北ケアの支援イベント=写真提供:澤田和三さん

 
支援活動を行うボブさん(左)、グロリアさん(右)夫妻=写真提供:澤田和三さん

支援活動を行うボブさん(左)、グロリアさん(右)夫妻=写真提供:澤田和三さん

 
子どもたちを楽しませる趣向も。仮設団地の広場で行われたレク活動=写真提供:澤田和三さん

子どもたちを楽しませる趣向も。仮設団地の広場で行われたレク活動=写真提供:澤田和三さん

 
 新型コロナウイルス禍でしばらく来日はかなわなかったが、今年4月に再来日。今回はジャズ演奏のサプライズも受け、心に残るひとときを市民らと楽しんだ。「今も毎日、釜石のことを思い祈り続けています」と話すゲラステッドさん。震災から12年を経て、まちの復興が進み、住民が明るさを取り戻してきたことに安堵(あんど)の表情を浮かべる。当時、釜石で耳にした「絆」という言葉―。大変な状況下で力を合わせて頑張っている姿が脳裏に深く刻まれている様子で、「ここで出会った人たちのことは決して忘れることはない。大切な友達。これからも良い将来があるよう祈っています」と願いを込めた。
 
さまざまな支援に感謝する野田武則市長(右)

さまざまな支援に感謝する野田武則市長(右)

 
 野田市長は「少しでも(被災者の)心が和むようにと、いろいろとご支援をいただいた。おかげさまでここまで復興を成し遂げることができた。改めてお礼を申し上げたい。次の世代にもこのことを伝えていかねば」と感謝の気持ちを伝えた。
 
 コンサートを企画した澤田さんは、震災の津波で大槌町の自宅を失った。釜石の友人宅での避難生活を経て、同市平田公園多目的グラウンドに開設された仮設住宅に入居。そこでゲラステッドさんと出会い、物資の提供を受けるなど大変世話になった。趣味の音楽でもつながり、澤田さんがバンド活動を再開すると、ゲラステッドさんはコンサートにも足を運んでくれた。「仮設に入ると支援物資が来なくなり、生活に困る人も出てきた。そんな時、ボブさん夫妻が手を差し伸べてくれた。冬服などもいただき本当にありがたかった」と振り返る。
 
ボブさん(右)に感謝し、ピアノを演奏する澤田和三さん(左)

ボブさん(右)に感謝し、ピアノを演奏する澤田和三さん(左)

 
 この日のコンサートで澤田さんは「ボブさんの気持ちに響けば…」と心を込めて演奏。今もフェイスブックで連絡を取り合う仲で、「無二の親友。これからもずっとつながりを持ち続けたい」と望んだ。コンサートは「ボブさんの功績を多くの人に知ってほしい」との思いもあり、関係者の協力を得て実現させた。

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