釜石から届け…平和の願い 図書館長・読書サポーター 言葉でつなぐ戦争の記憶「やってはいけない」


2023/09/04
釜石新聞NewS #防災・安全

戦災を題材にした作品の朗読会「わたしたちのことばで語る戦争の記憶」

戦災を題材にした作品の朗読会「わたしたちのことばで語る戦争の記憶」

  
 釜石市小佐野町の市立図書館(川畑広恵館長)で8月26日、戦災を題材にした作品を伝える朗読会「わたしたちのことばで語る戦争の記憶」が開かれた。ロシアのウクライナ侵攻など世界では戦火が収まらずに苦しむ人もいる中、「つらくても記憶、記録を語り継ぐことが大切。一緒に戦争と平和を考える機会に」と同館が企画。市民ら約20人が太平洋戦争中の戦禍を記した手記や紙芝居などに耳を傾けた。
   
 読み手は、市内の小学校などで活動する読書サポーター「颯(かぜ)・2000」のメンバー4人と川畑館長。広島、長崎の原爆手記や詩、東京大空襲を題材にした絵本など、戦争の悲惨さと人々の心情、平和への思いが伝わるものを選んで朗読した。
   
知ってほしい、伝えたい…読み手それぞれが思いを込め朗読した

知ってほしい、伝えたい…読み手それぞれが思いを込め朗読した

   
 釜石の戦災を伝える紙芝居「釜石の艦砲射撃」も披露された。米英軍による2度の艦砲射撃(1945年)を経験した故鈴木洋一さん(元教員、画家)が残した記録。暗くて狭い、そして暑い防空壕(ごう)の中で汗だくになりながら爆発音や衝撃に耐える様子、焼けた家々や砲弾によってあちこちに大きな穴ができた市街地の被害状況が生々しく描かれている。
   
 この紙芝居では、2011年の東日本大震災も「忘れられない日」として記す。そのうえで、「戦争は悲劇、愚かな罪悪だ。人の力ではどうにもならない自然災害とは違い、人間が引き起こすもの。絶対にやってはいけない」と訴える。そして、続く願い。「みなさんは平和を願う気持ちを忘れないで、持ち続けて」
   
紙芝居を通じて釜石艦砲射撃の様子を伝えた

紙芝居を通じて釜石艦砲射撃の様子を伝えた

  
朗読にじっと耳を傾ける市民ら。平和の尊さをかみしめた

朗読にじっと耳を傾ける市民ら。平和の尊さをかみしめた

   
 参加者の感想は「内容は悲しものだが、心に残る時間だった」「声で聴くと印象が違う」など。祖母とともに聞き入った佐久間桜音(おと)さん(唐丹小5年)は、長崎で「焼き場に立つ少年」を撮影した米国人カメラマンの手記が印象に残ったといい、「赤ちゃんが死に、お兄ちゃんが一人ではだしで歩いたりしたのかなと思うと…すごい」とつぶやいた。
   
 紙芝居の読み聞かせをした佐野順子さん(70)は「(鈴木さんは)悲惨な歴史を子どもたちに伝えようと読まれていた。その思いを届けられたかな」と思いをはせた。千田雅恵さん(61)は、広島の原爆で子を奪われた父母らの手記集「星は見ている」から、本のタイトルの由来にもなった手記を朗読。深い悲しみがにじむ文章に「気持ちを重ねた」と目頭を熱くした。
   
平和への願いを込め朗読した川畑館長(左)と颯・2000のメンバー

平和への願いを込め朗読した川畑館長(左)と颯・2000のメンバー

  
戦争と平和をテーマにした所蔵本がずらり。伝える取り組みを続ける

戦争と平和をテーマにした所蔵本がずらり。伝える取り組みを続ける

   
 同館では8月に戦争に関する図書展を開くなど語り継ぐ取り組みにも力を入れてきた。川畑館長は、並んだ本や資料を目にした幼児が「戦争って何?」「戦ったり焼けたり死んだり…だめだね」と何か感じた様子に驚いたと明かし、「続けることで、小さな まちの図書館から平和への願いを広められる」と確かな感覚を抱いていた。
 
 

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