高校ラグビー強豪12チーム W杯聖地釜石・うのスタで交流試合 震災講話で防災も学ぶ
全国から高校ラグビーの強豪校が集った交流会=2日、釜石鵜住居復興スタジアム
全国のラグビー強豪校が参加した東北復興高校ラグビー交流会(同実行委主催)は1日から3日間、釜石市の釜石鵜住居復興スタジアムと根浜シーサイド天然芝広場で開かれた。常翔学園(大阪府)、東福岡(福岡県)、桐蔭学園(神奈川県)など、全国大会で名を知られた12チームが“ラグビーのまち釜石”に集結。約350人が試合や防災学習を通じて交流を深めた。
2019年に開かれたラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の会場の一つとなった同スタジアム。大会レガシーを継承し、ラグビー振興や震災復興の一助にと企画された交流会は当初20年に開催予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で断念。感染症の規制緩和が図られた今年、常翔学園ラグビー部の野上友一ゼネラルマネジャーの各校への声掛けで再び開催機運が高まり、地元釜石のラグビー関係者とともに3年越しの実現にこぎ着けた。
桐蔭学園(神奈川県、緑ジャージ)と福島県高校合同チームの試合
黒沢尻工業(岩手県、黒赤しまジャージ)―常翔学園(大阪府)=2日、根浜シーサイド
1、2の両日はできるだけ多くのチームと試合ができるよう、20分1本の対戦カードが組まれた。最終3日は、2日間の試合で選出されたベスト選手30人によるエキシビジョンマッチが行われた。各校の選手らはコロナ禍で他県チームとの試合機会が減っていただけに、本交流会は新年度のチーム作りに向け、自他の力を知るいい機会になった。
滞在中は、防災学習にも取り組んだ。学校ごとに東日本大震災の犠牲者の芳名が掲げられる「釜石祈りのパーク」や震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」を訪問。2日は同スタジアムに全参加者が集まり、未来館スタッフの川崎杏樹さん(26)から話を聞いた。川崎さんは震災前、同スタジアムの場所にあった釜石東中の卒業生で、2年時に震災を経験。隣接していた鵜住居小の児童と大津波から逃れた避難行動について話し、防災への備えの大切さを伝えた。
大津波から逃れた川崎杏樹さんの話を聞く参加者
スタジアムの場所にあった釜石東中、鵜住居小の校舎は高台造成地に新築され(写真奥)、2017年に仮設校舎から移った
東福岡高の内田陽太朗さん(3年)は初めて訪れた同スタジアムに「とても素晴らしいグラウンド。W杯選手がプレーした場所で試合ができてうれしい」と笑顔。同校は1月、全国高校ラグビー大会で7回目の優勝に輝いた。3月の全国選抜大会は準優勝。チームは「リベンジに向け燃えている」と、本交流会もレベルアップへの好機とした。内田さんは震災の話を聞き、被災地の悲しみに共感。家庭では災害時の避難場所や方法を家族で話し合い、非常持ち出し袋も準備しているといい、「これを機にさらに防災意識を高めたい」と話した。
東北からは仙台育英学園(写真:黄黒ジャージ)、秋田工業、青森山田も参加
対常翔学園戦でトライを決める仙台育英学園
参加者の中には釜石市出身者の姿も。釜石中から仙台育英学園に進んだ及川勝太さん(3年)は地元での交流機会を喜び、「全国大会トップ4のチームとも対戦できた。体を当ててみて常翔学園とかの強度の高さを実感。この冬の花園に向けて全国で勝てるチームになっていけたら」と刺激を受けた様子。長年抱いてきた花園出場の夢を糧に「地元の人たちに自分のプレーしている姿を見てもらえるよう、もっと頑張らねば」と精進を誓った。
釜石市出身、仙台育英学園3年のCTB及川勝太さん(左)。父勝加さん(右)は釜石シーウェイブスジュニアの指導者
実行委員長を務めた釜石市ラグビーフットボール協会の小笠原順一会長(63)は「全国からこれだけの強豪校が来てくれて感動している。今年はラグビーW杯(フランス大会)もあるので、もう一度地元のラグビー熱が高まれば」と期待。交流会の継続開催も見据え、「地元高校の合同チームの参加も実現できれば。これを機に釜石へのラグビー合宿誘致にも取り組んでいきたい」と夢を描いた。
釜石新聞NewS
復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム