林野火災の空中消火を想定 釜石市で消防・県防災ヘリ隊員が合同訓練 空と陸の連携強化へ


2023/03/29
釜石新聞NewS #防災・安全

釜石大槌消防本部と県防災ヘリコプターによる林野火災対応訓練=22日

釜石大槌消防本部と県防災ヘリコプターによる林野火災対応訓練=22日

 
 釜石大槌地区行政事務組合消防本部(大丸広美消防長)は22日、県防災航空隊と合同で林野火災対応訓練を行った。防災ヘリコプターによる空中消火を想定し、給水を行う地上部隊の資機材の取り扱い、ヘリとの無線交信、実際の散水などを行い、早期鎮圧・鎮火のための連携を確認した。空気の乾燥、入山機会の増加などで山林火災が発生しやすい春を迎えるのを前に実施した。
 
 訓練は釜石市片岸町の片岸公園を拠点に行われ、両機関から約40人が参加。地上部隊は釜石消防署の若手署員らが訓練に臨んだ。同航空隊が運用する防災ヘリ「ひめかみ」が到着すると、隊員らが空中消火に使用する消火バケットの組み立て方を署員に説明。重さ80キロのバケット(容量1200リットル)を署員らが2つ組み立て、待機していた水槽車からホースで給水した。
 
県防災航空隊の隊員が空中消火で使う資機材の扱い方を説明

県防災航空隊の隊員が空中消火で使う資機材の扱い方を説明

 
消火バケットの組み立てを体験する釜石消防署の署員ら

消火バケットの組み立てを体験する釜石消防署の署員ら

 
水槽車からホースを引いてバケットに給水する訓練

水槽車からホースを引いてバケットに給水する訓練

 
 今回はバケットに500~700リットルの水を積み、鵜住居川で6回散水。地上部隊は人員を入れ替えながら一連の作業を体験した。地上の指揮隊はヘリとの無線交信訓練を行った。県内では昨年、空中消火の水が地上で活動する消防団員にあたり大けがをする事故があり、空中と地上の連携強化を念頭に訓練した。消防長ら現場指揮者が搭乗しての上空偵察訓練も行った。
 
ヘリコプターから降ろしたワイヤーにバケットを装着し、つり上げる

ヘリコプターから降ろしたワイヤーにバケットを装着し、つり上げる

 
地上の指揮隊はヘリとの無線交信訓練も行った

地上の指揮隊はヘリとの無線交信訓練も行った

 
この日の訓練では鵜住居川に散水。釜石の隊員らは広範囲に対応可能な空中消火への理解を深めた

この日の訓練では鵜住居川に散水。釜石の隊員らは広範囲に対応可能な空中消火への理解を深めた

 
 ヘリを誘導するマーシャルを担当した釜石署の消防士・大津果穂さん(22)は防災ヘリとの訓練は初めての経験。「安全管理の重要性を再認識した。一つ一つの訓練を大切にして、学んだことを自分の業務に生かしたい」と気を引き締めた。
 
 県内各地の消防機関から派遣された隊員10人で編成する県防災航空隊には、2021年度から釜石大槌消防本部の佐藤友伍さん(39)が所属。本年度から副隊長を務めている(同本部初)。今回の訓練で地元の消防隊員には「空中消火の有効性を理解し、ヘリ特有の緊迫感、強風と騒音下での活動を体感してもらいたかった」といい、両者の連携強化に手応えを実感。航空、地上の両部隊が活動を共にする現場では「相互の活動を理解し、情報共有や活動調整を行う必要がある」とした。
 
 同市では2017年5月に尾崎半島で発生した大規模林野火災以降、山林火災は起きていない。大丸消防長は「誰でも現場作業にあたれるよう、訓練で経験を積むことが大事。新しい職員も今日はしっかり訓練できていた」とコメント。これから山林火災が発生しやすい季節を迎えることから、一般市民に向けても「山に入って火を使うことは極力避け、入山前後にも十分気を付けてほしい」と火災防止への協力を願った。
 
 市内では今年に入り4件の建物火災が発生している。家庭や職場でも今一度、火の元の確認を十分に行うことが必要だ。

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