命を守る教育 本と追体験で発信 全児童津波逃れた釜石小・卒業生ら 防災教育大賞受賞


2023/03/21
釜石新聞NewS #防災・安全

野田武則市長(左)に受賞を報告した加藤孔子さん(中)と寺田恵美子さん

野田武則市長(左)に受賞を報告した加藤孔子さん(中)と寺田恵美子さん

 
 東日本大震災時、釜石小児童は学校管理下になかったものの、各自の判断で津波から逃げ、184人全員が助かった。なぜ命を守れたのか―。児童らの避難行動や判断する力となった同校の防災教育をまとめた伝承本をつくってみた。あの時の避難経路を、震災を知らない子どもたちとたどる活動もやってみた…。同校の卒業生と当時の教職員有志でつくる「2011team(チーム)釜石小ぼうさい」(加藤孔子代表)が、体験を風化させまいと取り組みを進めている。こうした次世代につなぐ活動が評価され、「防災教育チャレンジプラン」(内閣府など主催)で2022年度の防災教育大賞を受賞した。
 
 全国12団体が取り組む中、2月11日にウェブ報告会が開催され、最高賞に選ばれた。震災発生時に同校の校長だった加藤さん(65)と、統括地域コーディネーターとして同校で活動する寺田恵美子さん(60)が3月17日に釜石市役所の野田武則市長を訪ね、受賞を報告した。
 
伝承本「このたねとばそ」を紹介する加藤さん(左)と寺田さん

伝承本「このたねとばそ」を紹介する加藤さん(左)と寺田さん

 
 チーム釜小は昨夏、同校の防災教育を全国に発信し未来に残すため、伝承本「このたねとばそ」(A4判、83ページ)を製作した。▽08年に始めた下校時避難訓練などの防災教育▽あの日、自己判断で避難した児童の証言▽震災直後に学校再開に奔走した教職員の対応-などの詳細を記録。市内の小中学校に届けたほか、加藤さんが名誉館長を務める鵜住居町の「いのちをつなぐ未来館」でも限定配布した。
 
 そして、大津波を生き抜いた同校卒業生が当時の避難行動を語り、小学生に実際に体験してもらうフィールドワークも実施。話を聞いた小学生に、避難の判断ができた理由や自分たちにできることを話し合ってもらったりした。震災を経験していない世代が増える中、子どもたちに学びや気付きという“たね”を植え付ける機会にした。
 
昨年8月に行った震災伝承フィールドワーク

昨年8月に行った震災伝承フィールドワーク

 
釜小卒業生の話を聞いて児童が話し合う活動も

釜小卒業生の話を聞いて児童が話し合う活動も

 
 加藤さんは「大変な津波を生き抜いた子どもたちの判断、行動を何とかして発信したかった。思いがけない受賞で、すごく驚いた。種が全国に飛んだのかな…。受賞もまた発信になる。震災を知らない人たちに語り継ぎ、バトンをつないでいきたい」と意欲を強めた。
 
 野田市長は「年数がたつと風化するが、きちんと次の世代につなげなければいけない。学校現場や社会の中で頑張り、取り組みの裾野を広げてほしい」と期待した。

 

釜石新聞NewS

釜石新聞NewS

復興釜石新聞を前身とするWeb版釜石新聞です。専属記者2名が地域の出来事や暮らしに関する様々なNEWSをお届けします。

取材に関する情報提供など: 担当直通電話 090-5233-1373/FAX 0193-27-8331/問い合わせフォーム


釜石のイベント情報

もっと見る

釜石のイチ押し商品

商品一覧へ

釜石の注目トピックス