【3.11追悼】大切な人を迎える「祈りの灯」 釜石・根浜 命を思う明かりで地域を包む


2023/03/09
釜石新聞NewS #防災・安全

根浜地区の避難路を彩るハマナスを模したイルミネーション

根浜地区の避難路を彩るハマナスを模したイルミネーション

 
 東日本大震災から12年を迎えるのを前に、釜石市鵜住居町根浜地区に5日、犠牲者を追悼する「海への祈り灯(び)」がともされた。旅館宝来館前や松林には大切な人の名前や「明日も心に太陽を」などメッセージが書き込まれたキャンドルが点在。旅館の裏山にある木製の避難路「絆の道」は、同地区を象徴する花「ハマナス」を模したイルミネーションで彩られ、あの日津波に襲われた地域を優しく包み込んでいる。11日まで。
  
根浜の海を望む松林に置かれたキャンドル

根浜の海を望む松林に置かれたキャンドル

 
 同地区に明かりをともす取り組みは市民団体が始めた。松林に道をつくるようにキャンドルを配置していたが、ここ数年は同館おかみの岩崎昭子さん(66)の発案でメッセージを書き込んだり、「命を感じる場所」に置いてもらう形にする。“あの人”を思う言葉や祈りが込められた光がここに、そこにも、あそこにも。震災ボランティア、応援職員など被災地の復興に関わり、今も思いを寄せ続けている人たちから寄せられた願いが込もった明かりもある。
 
キャンドルにメッセージを書き込む親子。右端は出迎えた岩崎さん

キャンドルにメッセージを書き込む親子。右端は出迎えた岩崎さん

 
 キャンドルは約1万個を用意。同館や観光施設「根浜シーサイド」でメッセージを書き込めるコーナーを設けている。大槌湾を望む箱崎白浜から室浜地区、両石町にも配っていて、各地の津波記念碑などに置いて祈りを届ける。岩崎さんは「明かりを見ると『私はここにいます』と言っているように感じる。犠牲になった人たちは海や空、見えない所から見守ってくれている。思いをつなぐような自分たちの祈りの形をつくっていきたい」と穏やかな表情で話した。
  
避難路にイルミネーションを飾り付けた花巻のメンバーらが集って「スイッチオン!」

避難路にイルミネーションを飾り付けた花巻のメンバーらが集って「スイッチオン!」

  
 避難路のイルミネーションは「花巻絆の道植栽ボランティア有志」が設置。ペットボトルを使った花形の飾り約350個で彩る。発光ダイオード(LED)の電力は、地域から出る廃食油を精製したバイオディーゼル燃料を使用。避難路入り口付近には島倉千代子さんの歌碑があり、「おかえりなさい」と明かりに温かさを添えている。
 
 飾り付けの発案者は岩崎さん。思いを形にした花巻有志グループの事務局、関喬(たかし)さん(75)は「この地を訪れる人たちに花で楽しんでほしいと続けてきた活動の延長。古里に帰ってくる魂にささげる明かりになれば」と願う。
  
避難路を明るく照らすイルミネーション

避難路を明るく照らすイルミネーション

 
命を思う明かりが点在する根浜海岸の松林

命を思う明かりが点在する根浜海岸の松林

  
 根浜地区では11日に「祈りの空間」を催す。追悼の風船、祈りの甚句、「とうほくこよみのよぶね」、花火「白菊」の打ち上げなどが予定されている。
 

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