小山怜央さん、合格は持ち越し 将棋・棋士編入試験第3局で黒星 地元釜石で家族ら応援「次こそ」
小山怜央さんの地元釜石・中妻地区生活応援センターで開かれた大盤解説会
釜石市出身で将棋のアマチュア強豪、小山怜央さん(29)=横浜市、将棋講師=は20日、大阪市の関西将棋会館でプロ棋士編入試験5番勝負の第3局に臨み、狩山幹生四段(21)に165手までで敗れ、対戦成績は2勝1敗となった。初戦から連勝し合格にあと1勝としていたが、岩手県初のプロ棋士誕生は次戦以降に持ち越しとなった。地元釜石では家族らが戦況を見守り、「次こそは」と期待を残した。
午前10時、小山さんの後手で対局が始まった。戦型は「相雁木(あいがんぎ)」。序盤戦はじっくりとした戦局が続いた。中盤戦以降は狩山四段がリードを広げる展開に。小山さんは最終盤、思い切った勝負手を繰り出したが冷静に対応され、粘りも及ばず押し切られた。
プロ棋士編入試験5番勝負第3局で小山さんの戦いぶりを見守る釜石市民
釜石市上中島町の中妻地区生活応援センターでは釜石将棋教室による大盤解説会があり、日本将棋連盟釜石支部長の土橋吉孝さん(67)が指し手の意味や狙いを説明。小山さんの父敏昭さん(60)、母聖子さん(60)、将棋愛好者ら約20人が盤上に再現される対局の行方を見守った。
「攻め合いですね」「厳しいな」「(リードされても)離されずついていけば、まだ楽しみはある。怜央は終盤に強い」「最後のギリギリまで勝ち筋を探す。諦めず頑張るのが昔から彼の良いところ」。同支部が開く将棋教室で少年期の小山さんを指導した土橋さんならではの視点を入れた解説が続いた。参加者らを交え、次の一手を予想しながら見守っていたが、午後4時45分ごろ、小山さんが投了すると会場にため息が漏れた。
小山さんが小学生の頃に将棋教室で指導した土橋吉孝さんが解説
目の前に盤を置いて一手ごと再現しながら解説を聞く人も
土橋さんは「相手の得意の戦型に持ち込まれ、序盤に時間を使いすぎたのが敗因かな。相手が一枚上手。(小山さんは)駒がのびのび前に行けなかった。終盤に力を出せる場面がなく、不完全燃焼だったろう」と振り返った。会場入りした映像で襟のボタンが外れているように見えたと言い、「いつもと違って緊張していたね。プレッシャーもあったのだろう」と推測。一方、「3連勝で試験を通過した人はいない」と強調し、「もう1回、多めに打てると思えばいい」と前向きに捉える。次戦に向けては「相手の得意な戦型を勉強し準備する。相手の土俵で戦わず、自分の持ち味を出してほしい」とエールを送った。
小山さんの挑戦を見守る敏昭さん(手前)、聖子さん(左奥)
聖子さんも小山さんの緊張を感じ取った様子で、「少し心配しながら見ていた。次はプレッシャーを感じずに集中して頑張ってほしい」と願った。敏昭さんは「次がある。切り替えて取り組んでほしい」と背中を押す。
2016年の第1回釜石市長杯争奪世代間交流将棋大会にチーム「小山家」で参加した小山さん(左)=復興釜石新聞アーカイブ
小山さんは鵜住居町出身。岩手県立大在学中の2014年に学生名人に輝いた。15年アマ名人戦優勝、16年アマ王将位優勝など6大アマタイトルのうち5つで優勝経験がある。卒業後、強豪のリコー将棋部に在籍したことも。現在は横浜市で将棋講師を務める。昨年秋、出場が認められている公式戦でプロを相手に10勝以上かつ6割5分以上の勝率という条件を満たし棋士編入試験資格を獲得、受験を希望した。
試験は新人棋士5人と対戦して3勝で合格。昨年11月の第1局で徳田拳士四段(25)、同12月の第2局で岡部怜央四段(23)に勝利。あと1勝で、プロ棋士養成機関「奨励会」の在籍経験がないアマが初めて合格する。また本県のプロ第1号となる。
第4局は2月の予定で、横山友紀四段(22)と対戦する。
注目を集める小山さんの挑戦。次戦、夢をかなえる大一番に市民は熱視線を送る
釜石新聞NewS
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