地域の防災力UP!高齢者の避難を疑似体験 釜石・尾崎白浜地区で防災訓練
動きを制限する装具や重りを着けて坂道を歩く参加者
釜石市平田の尾崎白浜地区で2日、釜石湾漁業協同組合白浜浦女性部(佐々木淳子部長、部員74人)の防災訓練(平田地域会議共催)があり、消防署員や市民活動を支援するNPO法人の職員らから消火器の使い方、無駄にしない備蓄について指導を受けた。高齢化する地域の現状を踏まえ、災害時に高齢者が避難する際の課題を探ろうと高齢者の疑似体験も実施。動きや視界を制限する器具などを着け、高齢者が抱える不便さや不自由な思いに理解を深めた。
同女性部は自主防災組織、尾崎白浜婦人消防協力隊として災害時に地域を守る活動も担う。同協力隊の活動は1989年に始まり、36年目。漁業をなりわいとする地区で男性が海に出ている間、地域に残る女性たちが万一の時にいち早く対応するために組織され、現在も引き継がれている。
訓練は地域防災力の向上や防災活動の円滑化を目的に毎年行い、避難・誘導、消火、炊き出し、自動体外式除細動器(AED)を使った救命処置法などを学んできた。コロナ禍で昨年は中止したが、今年は感染対策をとって屋外で活動する形で実施。尾崎白浜漁港の屋根のある広場(荷さばき場)に尾崎白浜、佐須の両地区から計16人が参集した。
特殊なゴーグルやヘッドホンを装着し高齢者の体を疑似体験
段差の上り下りは慎重に。高齢者の動きを体感した
高齢者疑似体験は市社会福祉協議会の職員を講師に、参加者は視野を狭めて白内障のように見えるゴーグルや音を遮るヘッドホンを身に着けて新聞紙面やチラシなどの文字を見たり、段差を上ったり。足の動きを制限する装具や重りを着用して高台の避難場所につながる坂道を歩いた人たちは「足が重い」「動きにくい」と、高齢者の身になって避難の大変さを実感した。
佐々木吹美子さん(51)は、人を乗せた車いすを押しながら坂道を上る体験で発見があったという。左右にゆっくりと蛇行するように進むと、介助に必要な力が軽減された。家族に避難が困難な人はおらず、「今の自分では感じ得ないことを体験し、高齢者の気持ちが分かった。小さな集落で隣近所との関わりは多く、役立つことを学ぶことで防災意識が高まる。何かあった時にできることを考える機会になった」と受け止めた。
車いすで坂道を上る時は「蛇行運転」がポイントに
消火器の使い方も学び、実際に水消火器で初期消火の訓練をした。ピンを抜く、ノズルを持つ、距離をとる、押すという一連の動作を確認しながら、火元に見立てた的に向かって水を噴射させた。備蓄食に関する講話では、いつもの食べ物を少し多めに保管し、消費した分を買い足していく「ローリングストック」が紹介された。
訓練用の水消火器で火元に見立てた的に放水する参加者
2011年の東日本大震災では同地区も大きな被害を受けた。17年には同地区で大規模林野火災が発生。19年は台風19号による豪雨災害があり、同協力隊は避難所での炊き出しなどで尽力した。自然災害が常襲化する中、震災後の人口減、高齢化が活動に直結し、メンバーが減ってしまうのが課題だ。そこで重要となるのが、地域と個々の防災力の向上。佐々木部長(67)は「何度も繰り返さないと身に付かない。少しずつ訓練を重ね、危機への対応力をつないでいきたい」と気を引き締めた。
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