ラグビーW杯のレガシーを後世に 「釜石絆の日」イベント 交流の輪広がる
「釜石絆の日」ジュニア(小学生)マッチ=24日、釜石鵜住居復興スタジアム
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会開催から3年―。競技会場の一つとなった釜石市では、フィジー対ウルグアイ戦が行われた9月25日を「釜石絆の日」とし、震災復興や大会を機に生まれた支援者とのつながりを継承する取り組みを進める。本年度は23日から25日まで、県内外の小中学生や釜石シーウェイブス(SW)RFCのラグビー交流試合などが行われた。官民でつくる釜石ラグビー応援団(中田義仁団長)が主催した。
姉妹都市の愛知県東海市、東日本大震災後の復興支援でつながる静岡県袋井市から小学生と引率者ら計約60人が来釜。23日は鵜住居町の震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」を訪れ、釜石市の被災状況と震災の教訓を学んだ。小中学生が津波から避難した経路も見学し、迅速な高台避難の大切さを実感した。
東日本大震災の被災状況を学ぶ袋井市の小学生ら=いのちをつなぐ未来館、23日
メモを取るなどしながら震災学習に臨む東海市の小学生
初めて釜石市を訪れた袋井市の有藤皐君(山名小5年)は「たくさんの人が亡くなり、まちが破壊されたことを聞き、悲しくなった」と震災の悲惨さを実感。地元では南海トラフ地震による津波の危険性もあり、「すぐに山の方に避難するなど、自分の命は自分で守れるようになりたい。釜石で学んだことを家族や友だちにも伝えようと思う」と話した。
24日はW杯会場となった釜石鵜住居復興スタジアムで、3市の小学生によるスポーツ交流が行われた。袋井市の小学生8人はタグラグビークラブで活動する1~6年生。釜石からは鵜住居小のタグラグビーチームに所属する4~6年生22人が参加し、試合で交流を深めた。あいにくの雨模様だったが、子どもたちは元気いっぱい。試合の楽しさを味わった。
鵜住居小6年の千葉龍希君は「友だちとかもできて楽しい。またこういう機会があるといいな」と期待。4年生から始めたタグラグビーは「トライを決めた瞬間が気持ちいい」と話し、冬の県大会に向けて「みんなで協力して勝ちたい」と意気込んだ。
タグラグビーの試合を楽しむ袋井市と釜石・鵜住居小の児童=24日
ラグビーの交流試合は、東海ラグビースクールと釜石SWジュニアの対戦。東海市からは6年生14人が訪れた。12分マッチを3本行った後、両チームの選手を混ぜた即席チームでの対戦も試みた。選手たちは日ごろの練習の成果を発揮しながら、普段対戦機会のない相手のプレーにも刺激を受けた。
東海チームの釜石遠征リーダーを務めた井上咲太郎君(名古屋市立西山小6年)は「さすが“ラグビーのまち釜石”だけあって皆さん強くて、いい練習になった。他地域のチームとの対戦は新しい戦略とかもあってすごく勉強になる」と成果を得た。古くから親交の深い両市について、「これからもずっと交流が続いてほしい。釜石の子どもたちが東海市に来たらぜひ歓迎したい」と目を輝かせた。
東海ラグビースクール(赤)と釜石SWジュニアの交流試合。雨天を吹き飛ばす熱戦を繰り広げた
「また会おう!」末永い絆を願い笑顔で記念撮影
東海市には1964年、製鉄所の合理化に伴い、釜石市から約2300人が移住した。以降、官民の交流が続き、災害時の相互応援協定(2003年)などを経て、07年に姉妹都市提携を結んだ。一方、袋井市は、1880年代に釜石で日本の近代製鉄の基礎を築いた横山久太郎(釜石鉱山田中製鉄所初代所長)の出身地で、震災以降、釜石市に対し多くの支援の手を差し伸べてきた。
絆マッチ「釜石SW(赤)-船岡自衛隊ワイルドボアーズ」
25日は同スタジアムでラグビー絆マッチが行われ、中学生チームの釜石SWアカデミー、レッドファイヤーズRFC(北上市)、弘前サクラオーバルズ(青森県弘前市)が交流した。釜石SWはトップイーストリーグの船岡自衛隊ワイルドボアーズと対戦。17トライを奪い、95-0で勝利した。24日は小学生向けのラグビークリニック、25日は誰でもラグビー体験ができる「ラグビーのまち釜石教室」も行われた。
この日の試合は釜石SWのプレシーズンマッチ3戦目。観戦無料で行われた
釜石新聞NewS
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