平和を願う鐘の音 釜石・唐丹から世界へ 盛岩寺で地域住民ら思いを発信
盛岩寺の鐘楼で鐘をつく唐丹小児童=5日
釜石市唐丹町の盛岩寺(三宅俊禅住職)で5日、「鎮魂と平和の鐘を鳴らそう・座禅会」が開かれた。唐丹公民館(千菅英理子館長)と釜石ユネスコ協会(岩切久仁会長、会員53人)の共催事業。地元住民と同協会員34人が参加し、戦災、震災犠牲者の慰霊、世界平和への願いを共有、発信した。
太平洋戦争末期の2度の艦砲射撃、幾たびの大地震津波で多くの尊い命が失われてきた同市。唐丹町で続く同行事は、慰霊と平和への祈りをささげ、日常や自らを見つめ直す機会にと、毎年お盆の前後に行われている。
参加者を前に上野賢庸副住職が講話。「故人を弔うことは世界共通。亡くなった人が安心してあの世に旅立っていけるようにするとともに、残された人たちも心の安らぎを得られるようにというのが根本」と供養の大切さを説いた。沖縄本土復帰50年を記念し、上方舞師範・吉村高鴻さん(住田町)が平和への祈りを込めた舞を披露した。
「さとうきび畑」の曲で舞う吉村高鴻さん
吉村さんに拍手を送る釜石ユネスコ協会の会員ら
参加者は境内の鐘楼に移動し、順番に打鐘。戦災、震災犠牲者や先祖の御霊の冥福を祈るとともに、ロシアのウクライナへの軍事侵攻、中国、台湾関係の緊張など不穏な世界情勢も懸念しながら、平和への強い願いを鐘の音に込めた。
鐘をつき、鎮魂と平和な世界の実現を願う子ども
最後は座禅会。上野副住職から脚の組み方、姿勢の整え方、礼儀などを教わった後、10分、15分間の2回に分けて精神統一に挑戦した。参加者は普段なかなか体験することのない静寂な時間に身を委ね、自身の心を静かに見つめ直した。虫の声だけが響く夏ならではの空間―。「当たり前に聞いている小さな音の発見もあったのでは。普段の生活の中でも座禅を通して気付くことがある」と上野副住職。
上野賢庸副住職から座禅の仕方を学ぶ
雑念を払い、座禅に取り組む。日常を忘れ、自分と向き合う時間
最後は一人一人、“警策”もいただいた
会には未来を担う子どもたちが多数参加した。唐丹小6年の千葉柊瑛君は「貴重な経験。戦争や震災で(無念にも)命を落としてしまった人たちのことを決して忘れず、自分の生活も考えていきたい」。同5年の川村向葵(ひまり)さんは「座禅はつらかったけど、終わってみるとすっきりした気分。お家に帰ったら、おじいちゃんおばあちゃんに学んだことを報告したい」と話した。
ユネスコ協会の岩切会長は「今後、戦争体験者はさらに減り、話を聞ける機会も少なくなっていく。こういう催しが戦災の大変さ、平和の尊さを知るきっかけになれば」と願う。
「子どもたちの笑顔を守るために…」。平和な社会の実現は大人たちの責務
同行事は児童を対象に開かれていた郷土を学ぶ「とうに寺子屋教室」が前身。2008年からは、国連決議の「平和の文化」創造に取り組むユネスコ協会と共催する。東日本大震災があった11年は同寺の鐘楼が倒壊したため休止。再建した12年から再開している。
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