美術工芸品で味わう「鉄のまち釜石」 鉄の歴史館 展覧会で各種31点公開
8月29日まで開催される絵画や鉄器などを集めた「鉄の展覧会Ⅱ」=鉄の歴史館
釜石市大平町の鉄の歴史館は15日から、夏季特別企画展として「鉄の展覧会Ⅱ」を開催している。製鉄業で栄えた同市を象徴する絵画や工芸品、彫刻を見ることができるほか、釜石製鉄所の労働者の文化活動から波及した同市の絵画史などを通して、芸術文化発展の礎を知ることができる。8月29日まで行われる(火曜日休館)。
同展は昨夏に続く第2弾の企画。普段は非公開の同館所蔵品と常設展示品、市郷土資料館などから借用した作品計31点を公開する。本会場の2階会議室を中心に“館内まるごと美術館”として楽しんでもらう仕掛け。
絵画は17点(うち常設3)を公開。釜石製鉄所の高炉を描いた油彩作品を中心に集めた。作者は市内の絵画グループの活動でもその名を残してきた製鉄所OBなどのアマチュア画家ら。地元美術界をけん引してきた先達の貴重な作品が並ぶ。釜石で洋式高炉による連続出銑に成功した大島高任の肖像画などもある。
構図やタッチで趣を変える「高炉」の油彩画。作者:(左)及川久さん、(右)菅野幸夫さん
本会場内で最大サイズの佐々木由宣さんの作品(右)。2基の高炉が時代を物語る
釜石の絵画活動の歴史を語る上で欠かせないのが、1920(大正9)年に釜石製鉄所内で発足した「真道会」。労働者が体育・文化活動に親しむための組織で、美術部は32(昭和7)年ごろに結成。同時期、鉱山小学校でも絵画教室が始まり、46(昭和21)年の「釜石文化協会」結成へとつながっていく。戦後の芸術文化活動をリードした人たちが立ち上げた「美術集団サムディ45」や「釜石市民絵画教室」など、現在も複数のグループが精力的に活動を続ける。
工芸品は釜石産の鉄で鋳造された鉄器類。大正から昭和初期の鉄瓶、火鉢、茶こぼし、花瓶が並ぶ。釜石製鉄所では明治期から鋳物造りが始まり、大正期の質の向上で用と美を兼ね備えた工芸的価値のあるものに発展した。会場では「釜石鉄山製」の銘が入ったものや、学校から受注した卒業記念品などが見られる。
さまざまな形、デザインが目を引く鉄瓶が並ぶ
この他、92(平成4)年に釜石(平田埋立地)をメイン会場に開かれた「三陸・海の博覧会」から30周年となることを記念して、会場のデザイン画(郷土資料館所蔵)も展示されている。同博覧会は7~9月の75日間開催され、201万人が来場した。
三陸・海の博覧会の会場デザイン画も複数枚展示
同館では「同じ高炉のモチーフでも見る角度や切り取り方によって受ける印象が違う。作者それぞれの表現を味わってもらえれば。この機会に釜石の美術史にも目を向けてほしい」と来館を呼び掛ける。見学時間は午前9時~午後5時まで(最終入館は午後4時まで)。
釜石新聞NewS
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