避難所見直しへ、釜石市 最大クラス津波想定 県公表を受け説明会
津波浸水想定について質問や意見が相次いだ住民説明会
釜石市で18日、県が今年3月に公表した最大クラスの津波浸水想定に関する住民説明会が始まった。同日は新町の双葉小体育館で開かれ、甲子・小佐野・中妻地区の住民約40人が参加。東日本大震災時に浸水しなかった地域に被害が及ぶ可能性が示され、避難のあり方をあらためて考えた。説明会は地区別に計4回開催。参加者から上がった意見を緊急避難場所などの見直しに反映させる。
市防災危機管理課の川﨑浩二課長が、県がシミュレーションに使用した条件などを解説。満潮時に震災や日本海溝など最大クラスの津波が発生し、地盤沈下が起きて防潮堤が破壊された場合の地区ごとの浸水深などを伝えた。
参加者は資料を確認しながら説明にじっと耳を傾けた
中妻地区は海まで2キロ強あり、震災の津波では浸水しなかった。2020年9月に内閣府が公表した最大級の津波浸水想定で、海に近い千鳥町や中妻町が新たに浸水区域に入っていた。今回の県想定では、上中島町の一部まで浸水の範囲が広がり、地区の拠点避難所となる公共施設も最大で5~10メートルの浸水の可能性があると示された。
「そういう想定を示されても、逃げない人は逃げない。大丈夫だと思っている人が多い」と口を開いたのは千鳥町の男性。住民間の温度差を感じている様子で、危機感や避難の必要性を認識させるような情報伝達の在り方を考えてほしいと要望した。中妻町の男性も「浸水範囲や深さを色分けした図面で示されてもピンとこない」と指摘。鵜住居町の学校にある高台避難を促す目印ラインを例に、「ハザードマップを見える化するのはどうか。いつも意識できるようになる」と提案した。
中妻町や上中島町など釜石地区(西部)の防潮堤が破堤した場合の県津波浸水想定
鈴子町の佐々木眞さん(69)は、津波緊急避難場所とされている最寄りの市教育センターが6・0メートル浸水するとの想定に不安を感じた様子。「避難場所を定める際の最低必要条件や津波到達時間の目安など、われわれが取るべき行動の指標をはっきりしてほしい」と求めた。
市内陸部の野田町に暮らす小菅幸江さん(41)は職場が海に近い松原町にあり、新たな津波想定が気になり参加。震災時に避難した松原公園が、今回の想定では1・0メートル浸水すると分かった。従業員の命を守る取り組みを考える立場にあるといい、「想定を社内で共有し、避難訓練のあり方も考え直さなければ」と気を引き締めた。震災後に生まれた子どもにも当時の様子を伝えるようにしていて、「自分の命を守れるように」と願っている。
説明会で上がった住民の声を避難方法の見直しに役立てる
市は、県の公表を受けて、津波浸水想定の分析や津波緊急避難場所(市内84カ所)の浸水状況調査、拠点避難所(同19カ所)の確認を進めている。今回の説明会のほか、開催中の各地域会議や復興まちづくり協議会でも説明を重ね、市民の声を聞きながら避難場所や避難経路などを見直す方針。9月をめどにウェブ版の市ハザードマップを更新、見直し結果を市広報紙で周知する。
住民説明会は各回午前10時から1時間を予定。日にちと場所は次の通り(かっこ内は対象地区)。
■6月25日 釜石東中体育館(鵜住居、栗橋)
■7月9日 市民ホール(本庁、平田)
■7月23日 唐丹中体育館(唐丹)
釜石新聞NewS
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