野菜栽培の基礎 実践で学ぶ 就農促進、農地活用目指し「入門塾」開講
大槌町で始まった初心者向けの「農業入門塾」
県沿岸広域振興局農林部主催の「農業入門塾」が5月25日、大槌町で開講した。担い手を育成し、農地を有効活用してもらうことで地域農業の活性化につなげようと、昨年に続き2年目の開講。釜石、大槌両市町から12人が受講し、10月まで全10回の実践講座で野菜栽培の基礎を学ぶ。
初日は塾耕作地近くの、かみよ稲穂館で開講式を実施。眞島芳明農林部長が「野菜栽培を楽しみながら農業について理解を深めていただきたい」とあいさつ。講師を務める県農業農村指導士の佐々木重吾さん(大槌町)、大船渡農業改良普及センターの照井直人技師が紹介された。
20代から70代の受講生一人一人が自己紹介し、受講動機や抱負を述べた。釜石市橋野町の三科宏輔さん(26)は地域おこし協力隊員として4月に移住したばかり。市内の製麺業者が和山高原で栽培するソバの生産を手伝う。今回の塾で「野菜作りを基礎から学び、自分で食べる分は自給できるような暮らしをしたい」と意気込んだ。
開講式で互いに自己紹介し合う12人の受講者
式の後は同センターの照井技師による座学。作付け計画の立て方、畑の作り方、植え付けの仕方を解説した。受講生は連作障害の回避、土壌改良、畝の上に張るマルチの役割など、必要な知識を学んだ。実習では時期ごとに果菜、葉菜、根菜類など11品目の栽培を予定する。
この日は座学に続き、畑作りに挑戦。講師の指導のもと1人ずつ割り当てられた区画に肥料をまき、長さ4メートル幅90センチの畝を2列作った。マルチをかぶせた後、穴を開けてピーマン、ナス、トマト、スイカの苗を植えた。収穫は早いもので6月下旬から始まり、スイカは8月下旬ごろになるという。
畝作りについて講師の佐々木重吾さん(右)から説明を受ける
初めてくわを握り畝作り。コツをつかむと徐々にペースアップも
地温上昇、雑草抑制、土壌水分保持に有効な黒マルチを畝の上に張った
大槌町大ケ口の黒澤仁之さん(65)はこの春、43年間従事した医療関係の仕事を定年退職。興味があった農作業に挑戦したいと受講を申し込んだ。「全くの素人。初めてくわを持った。これからが楽しみ」と笑顔を輝かせ、「日曜日には妻を連れてきて一緒に作業したい。できた野菜は孫に送ってやりたい」と収穫を心待ちにした。
釜石市浜町の藤澤育子さん(74)は今時期、店頭に並ぶ野菜苗を見て「やってみたいと思いつつも(知識がなく)なかなか手が出なかった」という。基礎から学べる本講座に「作業は大変だが、本格的な知識を教えてもらえる。受講者同士で協力し合ったりして会話も弾む」と充実した時間を喜ぶ。新型コロナウイルス禍で「2年間家にこもってばかりだったので足腰も弱ってしまった。運動不足解消にも」とほほ笑んだ。
果菜類の苗の植え付け。強風などで倒れないよう支柱も設置
講師の照井直人さん(右から2人目)からアドバイスをもらい作業
講座では今後も座学と実習を併用しながら農作業に関する幅広い知識を身に付ける。主催する振興局農林部の担当者は「農業後継者の減少は釜石、大槌地域でも顕著。農地は地域の財産。兼業、小規模でも何らかの形で農業に携わっていただく人が増えれば地域の活性化、維持にもつながる」とし、新規就農、定年帰農、産直向け栽培など多様な担い手の出現に期待を寄せる。
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