震災行方不明者の手掛かりを求めて 警察・海保・消防合同で大槌の海岸捜索
砂浜で震災行方不明者の手掛かりを探す釜石海上保安部職員
東日本大震災から11年となるのを前に10日、釜石警察署(前川剛署長)管内の行方不明者捜索が大槌町吉里吉里の小久保海岸で行われた。同署、釜石海上保安部(松吉慎一郎部長)、釜石大槌地区行政事務組合消防本部(大丸広美消防長)から72人が参加。砂浜と海中で、行方不明者につながる手掛かりを探した。
開始式に先立ち、全員で震災犠牲者に黙とう。前川署長は「明日で津波発生から11年を迎える。行方不明者の家族の気持ちに添えるよう、何らかの手掛かり、思い出の品を見つけ出してほしい」とあいさつ。松吉部長、大丸消防長が激励した。
砂浜では3機関の職員が手分けし、打ち上げられた漂流物を確認したり、砂を掘り起こして埋まっているものを調べた。警察嘱託犬2頭も指導手と捜索に協力した。海中捜索は同海岸前と周辺の3エリアで実施。最大水深7・5メートルの海域を、応援に駆け付けた第2管区海上保安本部仙台航空基地所属の機動救難士(潜水士)4人が捜索した。
陸と海で捜索活動が行われた大槌町、小久保海岸
震災から11年が経過し、海中は透明度が戻るが、発見につながる目標物(がれきなど)がないため、捜索は年々困難を極める。この日は深い所にとどまっている可能性などを視野にエリア内を丹念に捜索。屋根の瓦、指輪や腕時計が入ったポーチが見つかったが、震災との関連は不明。ポーチは持ち主の情報がなく、釜石署で当面保管する。
上席機動救難士の榎木大輔さん(41)は、震災時、第3管区横浜海上保安部に所属し、発災直後の海中捜索を経験した。年月の経過とともに当時の現場を知らない隊員が増える中、「口で伝えるだけではイメージしにくい。文字化した資料も活用し、若い隊員に経験をつないでいきたい」と話す。
捜索方法を打ち合わせする榎木大輔さん(中央)ら機動救難士(潜水士)
釜石警察署地域課被災地支援係の橋本明日香さん(25)は、幼いころ大槌町に暮らし、同町には親戚が多い。同係を希望し奥州署から異動後、初めての捜索活動。「家族の帰りを待つ人たちの気持ちは11年たっても変わらないと思う。警察官としてできること、何か手掛かりになるものを探したい」と熱心に取り組んだ。
大槌消防署の消防士、関真人さん(24)は同町出身。中学1年時に震災を経験した。同消防本部に入って2年目。「知り合いにも行方不明者がいる。消防としてもだが、町民の一人として見つけたいという思いが強い。できる限り捜索活動を続けていければ」と願う。
流木を移動させながら捜索する釜石警察署署員
目を凝らし、震災に関係するものを探す消防職員
この日の陸上捜索では、手掛かりになるものは発見できなかった。県内では同震災で1110人が行方不明。大槌町は416人、釜石市は152人の行方が分かっていない(2月末現在)。
釜石新聞NewS
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