三陸の海の可能性―水産・海洋研究フォーラム 漁業者ら水産業の未来像共有


2022/03/08
釜石新聞NewS #産業・経済

「未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに開かれた水産・海洋研究フォーラム

未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに開かれた水産・海洋研究フォーラム

 

 釜石市主催の水産・海洋研究フォーラムは2月25日、大町の釜石PITで開かれた。「未来へつなぐ三陸の海を考える」をテーマに、研究者や漁業者らが市内外で進む水産業の新たな取り組み事例を発表。会場とオンライン配信合わせて約70人が参加し、取り組みを共有することで三陸の海の可能性を考えた。

 

釜石の水産業への思いを明かす泉澤宏社長

釜石の水産業への思いを明かす泉澤宏社長

 

 地元の水産会社泉澤水産(両石町)の泉澤宏社長は、自動引き網システムや魚群探知機を定置網につけて沈め、24時間監視することにより定置網漁を「見える化」する操業支援システムの導入など全国で進む実証研究を紹介。操業方法の省人化や自動化の動きは作業の効率化、就労時間の削減など利点が多く、今後取り入れたいと考えを示した。

 

 経営悪化で魚市場が閉鎖された網代漁港(静岡県)で水産関係者が新たに取り組んだ、▽漁獲物の供給調整と不可価値向上(計画出荷と活魚・畜養など)▽価格形成への参加(生産者による競り、入札での販売など)▽直接販売(鮮魚の直接販売、料理店の経営)-なども説明。「少なくとって大きく売る取り組みが最も重要になる。持つ資源を積極的に活用し、売り上げの最大化を図ることが大事だ」と強調した。

 

釜石湾のサクラマス養殖試験研究を紹介する平井俊朗教授

釜石湾のサクラマス養殖試験研究を紹介する平井俊朗教授

 

 岩手大三陸水産研究センター長の平井俊朗教授は釜石湾で行うサクラマス養殖試験について、第1期(2020年7月~21年9月)の成果を報告。「魚体サイズ、価格のバラツキが大きい。早熟のためギンザケなど他のサーモンよりも出荷期間が短く、技術的に改善しなければいけない部分も多い」とした。

 

 釜石サーモン養殖は「これからが本番」とした上で、「他魚種、他地域との競合の中で埋没しないための戦略が必要。多様な事業形態の共存、異業種間連携の促進、若者の地域参入に寛容な風土づくりという視点が大事になる」と指摘。一過性ではない、真の地域産業化に向け、「釜石ならではの(サクラマスの)種苗づくりを進める」と前を見据えた。

 

研究者や漁業者の報告や事例に耳を傾けた参加者

研究者や漁業者の報告や事例に耳を傾けた参加者

 

 リモートで参加したNPO法人海辺つくり研究会の木村尚(たかし)理事は、多様な主体の連携による里海保全の取り組みについて講演。ワカメを通した釜石とのつながりも紹介した。21年まで釜石市まちづくり復興アドバイザーを務めた北海学園大経済学部の濱田武士教授は釜石水産業の課題と期待について独自の視点を示した。

 

 野田武則市長は「地域の経済産業活動を支える水産業は震災の影響、漁業者の高齢化、後継者不足、水産資源の減少などの課題がある」と研究への期待を述べた。

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