釜石・大槌の食文化を次世代に! 食の匠を講師に郷土料理伝承会


2021/11/10
釜石新聞NewS #文化・教育

釜石・大槌郷土料理伝承会=根浜シーサイド

釜石・大槌郷土料理伝承会=根浜シーサイド

 

 釜石・大槌郷土料理伝承会(同地域農業振興協議会など主催)は1日、釜石市鵜住居町の観光施設「根浜シーサイド」レストハウスで開かれた。地域に伝わる郷土料理を若い世代に継承し、次代の伝承者育成につなげようと企画。釜石・大槌郷土料理研究会(前川良子会長、11人)会員で、本県の「食の匠」に認定されている2人を講師に迎え、公募で集まった7人が「がんづき」と「しそ巻きずし」の作り方を学んだ。

 

 講師を務めたのは、釜石市の藤原政子さん(67)=2012年度、食の匠認定=と大槌町の飛田奈都子さん(58)=19年度、同認定=。藤原さんは幅広い世代に愛される郷土菓子「がんづき」を、飛田さんは同町の山間部で祝い事の際によく出されてきた「しそ巻きずし」の作り方を教えた。

 

 「がんづき」は蒸し上がった丸い形を“月”に、上に散らすくるみやごまを夜空を飛ぶ鳥“ガン”に見立て、そう呼ばれるようになったとされる(諸説あり)。ふわふわの食感とやさしい甘さが特長。農作業の休憩時のおやつ、お茶請けなどとして長年、親しまれてきた。この日は、藤原さんが研究を重ねたレシピを伝授。生地をきれいに膨らませる重曹の分量や材料の混ぜ方のポイントなどを教えた。

 

藤原政子さん(左から2人目)から、がんづきの作り方を教わる参加者

藤原政子さん(左から2人目)から、がんづきの作り方を教わる参加者

 

がんづきの蒸し上がり具合を串を刺してチェック

がんづきの蒸し上がり具合を串を刺してチェック

 

 「しそ巻きずし」は酢漬けした赤シソの葉を巻きすに並べ、広げたすし飯の上にさまざまな具を配置して巻く。赤シソは、のりが貴重だった時代に代用品として重宝され、塩や酢に付け込んだものを常備し、さまざまな料理に活用されたという。飛田さんはシソの並べ方や、すし飯が崩れないように巻く方法などを実演。今回の具材は厚焼き卵、シイタケの煮物、キュウリの塩漬け、くるみ、梅干しの5種で、巻いた後に切ってみると断面の色合いも食欲をそそった。

 

しそ巻きずしの巻き方を実演する飛田奈都子さん

しそ巻きずしの巻き方を実演する飛田奈都子さん

 

酢漬けした赤シソの葉を巻きすに並べていく作業。隙間ができないように並べるのがポイント

酢漬けした赤シソの葉を巻きすに並べていく作業。隙間ができないように並べるのがポイント

 

 参加者は講師に教わりながら調理に挑戦。初めて体験するメニューに興味津々だった。同市中妻町の櫻井京子さん(37)は「しそ巻きずしは初めて知った。大槌出身でも私は海側で、山側にはまた違った地域性があるんだなと。こうして教わる機会がもっとあれば」と期待。10歳と7歳の子ども(女子)は料理に興味を持ち始めていて、「家で一緒に作ってみたい。食べる専門から卒業して、自分も伝承活動などに携われたらいい」と笑った。

 

出来上がった2品を手に笑顔を輝かせる参加者ら

出来上がった2品を手に笑顔を輝かせる参加者ら

 
 同研究会は震災前、年4回ペースで一般客を対象にした郷土料理を楽しむ会を開催。震災後は、市外から訪れるボランティアらに「郷土料理を教えてほしい」と頼まれることも多く、「伝承会」という形で調理体験の場を設けてきた。藤原さんは「地元の身近な食材を使っていたからこそ、郷土料理として残ってきたと思う。手作りは食材選びからでき、家族の栄養や健康にも配慮できる。昔の人の知恵と工夫を今のお母さんたちにも教えたい」と望んだ。

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