100年後の広葉樹の森を目指して― 橋野鉄鉱山で5年目の育樹祭


2021/11/02
釜石新聞NewS #地域

橋野鉄鉱山稼働時代の森づくり育樹祭=23日

橋野鉄鉱山稼働時代の森づくり育樹祭=10月23日

 

 釜石市の世界遺産「橋野鉄鉱山」周辺の国有林を高炉稼働時代の広葉樹の森に再生させる取り組みの一環で、10月23日、スギ林の枝打ち作業が行われた。市と林野庁東北森林管理局三陸中部森林管理署(大船渡市)が共催する5年目の事業。市内外の関係機関、団体などから35人が参加し、作業に汗を流した。

 

 「橋野鉄鉱山稼働時代の森づくり育樹祭」と銘打った同事業は、約160年前、高炉の燃料となる木炭の供給源だった森林の価値を再認識し、当時の植生回復に関心を高める狙いで毎年秋に実施。参加者は一番高炉跡の南側に広がる人工林で、植樹から15年前後経過したスギの枝打ちを行った。林業関係者は一部、間伐も実施。森林管理に必要な手入れを施した。

 

スギ林の枝打ち作業に取り組む参加者

スギ林の枝打ち作業に取り組む参加者

 

林業のプロは急斜面の間伐も行った。森林を守る大切な作業

林業のプロは急斜面の間伐も行った。森林を守る大切な作業

 

ロープを使って切り倒した木を安全な位置に誘導

ロープを使って切り倒した木を安全な位置に誘導

 

 釜石観光ガイド会の川崎孝生さん(80、栗林町)は連続5回目の参加。「ここで鉄づくりができたのは、鉄鉱石はもちろん豊かな森林があったからこそ。(遺産として)大事にしなければ。85歳までは頑張って10年選手になれたら」と笑った。

 

 橋野鉄鉱山の構成資産エリアと緩衝地帯は大部分が国有林地。市と管理局は世界遺産登録前の2012年、森林を適正に管理するため、「橋野鉄鉱山郷土の森協定」を締結(17年、同保護協定に改称)。資産範囲と緩衝地帯約500ヘクタールを保護対象としている。

 

 一帯は戦後の高度経済成長に伴う木材需要に対応するため、スギやマツの人工造林が進み、広葉樹から針葉樹林に姿を変えた。世界遺産登録を機に、元の林相に戻していく取り組みが本格化。針葉樹は間伐を繰り返しながら伐採時期まで育て、木材資源として有効活用。間伐で空いた場所に広葉樹の侵入を促し、鉄鉱山稼働時代の森に徐々に復元していくことにしている。広葉樹林の再生には100~200年かかるとみられる。

 

約1時間半の作業で林はすっきりとした空間に

約1時間半の作業で林はすっきりとした空間に

 

 同管理署の菊地孝和署長は「枝打ちなどで地面に日光が届くようになれば、草が生え地盤もある程度強化される。これは近年増え続ける集中豪雨による災害を防ぐことにもつながる」と作業の重要性を強調。「昔の森に戻すには最低でも100年はかかるだろうが、地域の皆さんの協力を得て地道に取り組んでいけたら。年に1回でも足を運び、山の手入れと共に遺産見学の機会にしてもらえれば」と願った。   

 

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育樹祭参加者の皆さん、おつかれさまでした!

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