市民ら感動!「劇団四季」釜石で震災後初のホール公演 釜石出身俳優も熱演


2021/10/05
釜石新聞NewS #文化・教育

劇団四季ファミリーミュージカル「はじまりの樹の神話~ こそあどの森の物語~」撮影:樋口隆宏

劇団四季ファミリーミュージカル「はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~」撮影:樋口隆宏

 

 劇団四季の新作オリジナルファミリーミュージカル「はじまりの樹の神話~こそあどの森の物語~」が9月19日、釜石市大町の市民ホールTETTOで上演された。同団の釜石来演は、東日本大震災後の2011年7月に釜石中体育館で、被災地支援の特別招待公演を行って以来10年ぶり。同ホールの前身、津波で被災した釜石市民文化会館では1995年に公演が行われており、今回は市民待望のホールでの観劇が実現した。

 

 同団は震災から10年の今年、東北被災3県の沿岸ツアー公演を企画。18日の本県宮古市を皮切りに始まり、県内では5市で上演された。作品の原作は、日本児童文学界を代表する作家・岡田淳氏の「こそあどの森の物語」シリーズ第6巻。同シリーズ(全12巻)は累計約70万部を売り上げた児童文学の傑作で、国際的評価も受ける。

 

 物語は、こそあどの森で暮らす少年スキッパーが、大昔からやって来た少女ハシバミを助けたことを発端に、巨樹をめぐって神話と現実が交差するファンタジー。内気な少年が少女との出会いを通じて、「誰かの力になること」「人と人とのつながり」の大切さに気付き、仲間を得て成長していく姿が描かれる。

 

劇中の一場面 撮影:下坂敦俊

劇中の一場面 撮影:下坂敦俊

 

 観客はプロ集団が創る圧巻の舞台に目がくぎ付けとなり、カーテンコールでは感動の拍手が鳴りやまなかった。只越町の菊地千津子さん(45)は「劇団四季の舞台は子どものころに見て以来。日常を忘れる楽しいひとときで、没頭できた。最後の感謝の拍手とか、会場の一体感も良かった。すごく元気がでた」と大喜び。娘の凜さん(9)は「歌声もきれいだったし、迫力があった。演劇に少し興味が湧いた」と親子で感動の余韻に浸った。

 

出演者が手をつなぎ、観客の拍手に応えたカーテンコール

出演者が手をつなぎ、観客の拍手に応えたカーテンコール

 

最後は観客と出演者が手を振り合い、感動を分かち合った

最後は観客と出演者が手を振り合い、感動を分かち合った

 

釜石出身の俳優・菊池正さん 10年ぶりのふるさと公演

 

ギーコ役を演じた菊池正さん(左から2人目)

ギーコ役を演じた菊池正さん(左から2人目)

 

 今回の劇団四季釜石公演には、同市橋野町出身の俳優・菊池正さんが、森の住人ギーコ役で出演した。菊池さんは10年前に釜石中で行われた公演「ユタと不思議な仲間たち」の際にも来釜。市内の小・中学生、校内の避難所や仮設住宅で生活する被災者らを前に、命の尊さ、困難の先にある希望を感じさせる劇で市民を勇気づけた。津波で被災した釜石市民文化会館では、同年9月に四季の公演が行われる予定だったという。

 

10年前の釜石中での特別公演を伝える新聞記事(復興釜石新聞第16号)

10年前の釜石中での特別公演を伝える新聞記事(復興釜石新聞第16号)

 

 菊池さんは公演後、「10年前の経験も重なり、さまざまな思いが駆け巡るが、『舞台上ではいつも通り冷静に』という信念で臨んだ。熱のこもった拍手、子どもたちの笑顔。皆さんの反応の高さに驚いている。10年という時がたっても、被災された方が抱えた傷は癒えることはないと思う。しかし〝命のつながり〟というテーマが込められた本作品に触れ、わずかな時間でも元気になってもらえたなら、私たちも励まされる」(要約)とのコメントを寄せた。

 

地元の人たちの心に寄り添いながら舞台を務めた菊池正さん

地元の人たちの心に寄り添いながら舞台を務めた菊池正さん

 

 会場には、菊池さんの親族や出身地橋野町の住民らも駆け付けた。同町在住の70代女性2人は素晴らしい歌やダンスに魅了され、「感動で涙があふれた。生きる力をもらった。人は1人じゃない。互いに助け合うことが大事。あらためて実感した」と口をそろえた。菊池さんの活躍に「地元の誇り。頑張っている姿に力をもらう」と顔をほころばせ、会場を後にした。

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