釜石大槌の消防隊員 県防災ヘリと連携確認 震災後初の合同水難救助訓練


2021/09/27
釜石新聞NewS #防災・安全

甲子川河口で行われた水難救助訓練=15日

甲子川河口で行われた水難救助訓練=15日

 

 釜石大槌地区行政事務組合消防本部は15日、県防災航空隊との合同水難救助訓練を釜石市の釜石港公共ふ頭南側甲子川河口で行った。同訓練は東日本大震災後、初めて実施。船舶同士の衝突事故で海上に投げ出された人を救助する想定で行われ、地上部隊と防災ヘリコプターとの連携を確認。迅速で安全な救助活動の修練度を高めた。

 

 両機関から隊員約40人が参加。訓練は釜石沖で小型船舶同士の衝突事故が発生。1隻が転覆、もう1隻が沈没し、転覆した船にしがみついている1人と、船と一緒に沈んだとみられる1人を救助するという想定で行われた。

 

防災ヘリから降下した隊員(右)の救助活動

防災ヘリから降下した隊員(右)の救助活動

 

要救助者と隊員をつり上げ、機内に収容した

要救助者と隊員をつり上げ、機内に収容した

 

 始めに、ゴム製ボートにしがみついている要救助者を防災ヘリから降下した隊員が救助、機内に収容した。沈没を想定した訓練では、無線で上空からの捜索を要請された防災ヘリが沈没場所を示すマリンマーカ(信号発煙照明筒)を投下。指揮隊の指示で消防ボート隊と潜水隊が現場に向かい、潜水隊員5人が水中を潜行捜索。要救助者を発見し、ヘリの降下隊員に引き渡した。要救助者をつり上げたままヘリが移動し、岸壁で待機していた救急隊員に引き継いだ。

 

水中捜索の装備をする釜石大槌消防本部の隊員

水中捜索の装備をする釜石大槌消防本部の隊員

 

潜水隊員が沈没地点で要救助者の捜索を開始

潜水隊員が沈没地点で要救助者の捜索を開始

 

隊員が意識のない要救助者を抱えたまま、ヘリが岸壁上まで移動。救急隊員に引き継いだ

隊員が意識のない要救助者を抱えたまま、ヘリが岸壁上まで移動。救急隊員に引き継いだ

 

 潜水隊は「環状検索」(水底で円を描くようにして検索する方法)で要救助者を捜索。発見後、バルーンを上げて要救助者と一緒に浮上する訓練を行った。潜水隊員の菊池悟さん(39)は「航空隊との活動では、水上部隊がヘリから吹き下ろされる風や音の影響を受ける。今日の経験を生かし、同様の事案があった際にはうまく連携できるようにしたい」と気を引き締めた。同消防本部には潜水士の有資格者が27人いる。

 

 同航空隊は県の機関で、1996年から活動。県内各地の消防機関から隊員10人の派遣を受けて編成する。隊員は防災ヘリ「ひめかみ」に乗り込み、山岳遭難や水難事故の捜索・救助、林野火災の空中消火、災害時の救援物資・人員搬送など多岐にわたる活動を行う。釜石大槌地区消防本部からも交代で隊員が派遣されている。

 

県防災航空隊が運航する防災ヘリ「ひめかみ」

県防災航空隊が運航する防災ヘリ「ひめかみ」

 

公共ふ頭岸壁で救助訓練の指示を出す指揮隊

公共ふ頭岸壁で救助訓練の指示を出す指揮隊

 

 訓練後、同消防本部の大丸広美消防長は「自然災害なども含め、私たち地上班だけでは対応できない事案が多々あり、航空隊との連携は不可欠。海上保安部など関係機関とも協力し合い、緊急時の対応に努めたい」と話した。

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