〝鉄のまち〟を支えた釜石鉱山に興味津々 三陸ジオの観点から学ぶ


2021/08/13
釜石新聞NewS #観光

釜石公民館歴史講座 釜石鉱山の成り立ちに驚きと発見

 

公民館の歴史講座で釜石鉱山周辺を散策する参加者

公民館の歴史講座で釜石鉱山周辺を散策する参加者

 

 釜石市大町の釜石公民館(小原圭子館長)は7月30日、同館の事業「みなとかまいし歴史講座」の一環として、三陸ジオパークへの理解を深めるミニツアーを行った。同市のジオサイトの1つ、甲子町大橋の「釜石鉱山」を17人が訪問。釜石繁栄の源となった宝の山に理解を深め、〝近代製鉄発祥の地〟釜石の誇りを再認識した。

 

 市内で3人目、本年4月に資格を取得した「三陸ジオパーク認定ガイド」の藤井静子さん(71)=釜石観光ガイド会事務局次長=が講師を務めた。現地に向かうバスの中で、大島高任によって大橋に洋式高炉が造られた背景を自作の紙芝居などで説明。到着後、旧釜石鉱山事務所周辺を歩き、三陸の大地の成り立ち、金属鉱床がもたらされた理由を解説した。

 

ガイドの藤井静子さんから三陸の成り立ちを学ぶ

ガイドの藤井静子さんから三陸の成り立ちを学ぶ

 

 三陸の大地は、現在の早池峰山から釜石市小川町、栗林町の山中を通る斜めのラインを境に、北部と南部で異なる起源を持つ。南部は赤道付近にあったゴンドワナ大陸から分離した島が、北部は海底にたまった堆積物がそれぞれプレートの移動で北上し衝突。さらにアジア大陸とぶつかった後、地殻変動によって日本列島が大陸から分離し、現在の配置になったとされる。

 

 藤井さんは約5億年前から始まる三陸の歴史を説明。南部は衝突による隆起で険しい山ができ、釜石鉱山は約1億2千万年前に地表付近に上昇してきたマグマと石灰岩などが反応して、豊かな鉱物が形成されたことを紹介した。同事務所内の展示室では「ナウマンの地質図」などを示し、三陸ジオにおける同鉱山の価値をアピール。鉄鉱石は1993(平成5)年まで136年間採掘され、釜石の製鉄業を支え続けたことを明かした。

 

旧釜石鉱山事務所の展示を見学。興味津々で見入る

旧釜石鉱山事務所の展示を見学。興味津々で見入る

 

 鈴子町の松本真弓さん(71)、夕向有子さん(75)は「製鉄業繁栄の背景に、この地に鉱物資源を生む自然界の壮大な変遷があったことに驚く。こんな小さい地域のことから世界が広がるのは不思議な感覚。子どもたちに話せば、夢が膨らむのでは」と話し、太古の地球活動に思いを巡らせた。

 

 ガイドの藤井さんは「釜石が鉄のまちとして栄えたのは、大地の恵みがあったからこそ。釜石の製鉄の歴史と合わせ、三陸ジオにももっと目を向けてもらえれば」と期待を込めた。

 

「鉱山(やま)の宝探し」に子どもも大人も夢中!鉱物標本で夏休みの思い出

 

「何の石かな?」目を凝らし、鉱石を探す子ども

「何の石かな?」目を凝らし、鉱石を探す子ども

 

 釜石鉱山の歴史や鉱物について学ぶ夏休み特別企画「鉱山(やま)の宝探し」(釜石市主催)が7月31日、甲子町大橋の旧釜石鉱山事務所周辺で行われた。市内の親子など30人が参加。日本で初めて洋式高炉による連続出銑に成功した地で、当時の光景を想像しながら釜石の鉄づくりに理解を深めた。

 

 講師は市世界遺産課課長補佐の森一欽さん。始めに同事務所で座学を行い、鉱山の成り立ちや製鉄の歴史を紹介した。同鉱山が発見されたのは1727(享保12)年。南部藩士大島高任は1858(安政4)年、この地に洋式高炉を築き、鉄鉱石を原料とした連続出銑に日本で初めて成功する。1880(明治13)年、鈴子で官営釜石製鉄所が操業を開始すると、同鉱山で採掘された鉄鉱石は専用輸送機関・工部省鉱山寮釜石鉄道(日本で3番目の鉄道)で同製鉄所まで運ばれた。

 

 同鉱山では削岩機で穴を開け、火薬を詰め込んで発破する「坑道掘り」が行われた。1回の発破で掘り進められるのは約1メートル。坑道を全てつなげた総距離は約1千キロに及ぶという。参加者は鉱物室で、鉱山から採れるさまざまな種類の岩石を見学。この後の〝宝探し〟に備えた。

 

鉱物室で多様な岩石について説明を受ける参加者

鉱物室で多様な岩石について説明を受ける参加者

 

 一番のお楽しみ、鉱石の採取は敷地内の一角で行われた。ターゲットは「鉄鉱石」「柘榴(ざくろ)石」「黄銅鉱」「灰鉄輝石」「緑簾(りょくれん)石」「石灰石」など。色や模様を頼りに探し、表面から分からない石は職員に割ってもらって確認した。拾った石は段ボール製の箱に収め、名称を添えて鉱物標本にした。

 

世界遺産課の職員に割ってもらった石を観察

世界遺産課の職員に割ってもらった石を観察

 

 家族4人で参加した新田壮偉君(甲子小2年)は鉄鉱石を見つけ、「磁石が石にくっつくのを初めて見た。鉱石を探すのは面白い」と興味をそそられた様子。「きらきらした石が好き」と話す兄壮真君(同6年)は「5種類ぐらい見つけた。釜石の地質にも興味がある。将来は海外に行って、珍しい石とかを掘って研究してみたい」と夢を描いた。

 

選鉱で出た廃石が積み上げられた堆積場(高さ120メートル)と人工の滝に囲まれ記念撮影

選鉱で出た廃石が積み上げられた堆積場(高さ120メートル)と人工の滝に囲まれ記念撮影

 

 甲子町の佐野茂樹さん(62)は「子どものころ石拾いをした記憶があって、懐かしく思って」と夫婦で参加。「知らなかったことも分かりやすい説明で教えてもらい、とても参考になった。ここはまさに宝の山。時間を見つけてまた来てみたい」。作った標本は「しばらくは眺めて楽しむ。親戚の子とかにも見せてあげたい」と笑った。

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