漁船など70隻で海上安全、大漁を祈願~唐丹ひきふね祭り~
震災10年を機に開かれた「唐丹ひきふね祭り」
東日本大震災で被災した釜石市唐丹町で、震災犠牲者の鎮魂と海上安全などを祈願する「唐丹ひきふね祭り」(同実行委主催)が17日、行われた。町内4地区から漁船や釣り船約70隻が参加。唐丹湾内を巡航し、震災から10年となる地域の安寧と基幹産業である漁業の繁栄を祈った。
同町では長年、地区単位で地元神社の例祭に合わせ、海上渡御(ひき船祭り)を行ってきたが、今年初めて一堂に会しての祭りを企画。町最大行事である春の「釜石さくら祭り」(3年に1度開催)が新型コロナウイルス感染防止のため中止されたことから、「地域のつながりや子どもたちの地元愛を醸成する場に」と、唐丹地域会議(佐々木啓二議長)が関係団体と実行委を組織して開催した。
小白浜地区の西宮神社例祭に合わせて実施。小白浜漁港の岸壁で神事を行った後、同神社のみこしをお召し船に乗せ、各地区の船団とともに湾内に繰り出した。出航前には本郷地区を拠点に活動する「桜舞太鼓」が演奏し、祭りに花を添えた。
小白浜漁港で行われた西宮神社の例祭神事
出航を盛り上げる「桜舞太鼓」(鼓舞櫻会)の面々
各地区の船団が唐丹湾内を巡航し、華やかな海上絵巻を繰り広げた
お召し船は、6月に進水式を行ったばかりの唐丹町漁協の新定置網船「第18かねしま丸」(19トン)。震災時、漁協所有の定置網船3隻は津波に襲われながらも原型をとどめ、修理後、漁場の復旧作業に活躍。このたび老朽化が進んだ2隻(1989年製)を売却し、1隻を新造した。木村嘉人組合長(67)はお召し船の大役に「喜ばしいこと。サケの不漁など厳しい環境が続くが、何とか大漁してもらえるよう願いながら運航していきたい」と思いを込めた。
お召し船を務めた唐丹町漁協の「第18かねしま丸」。漁業振興への願いを込め進む
大漁旗をはためかせた船団は湾内を2周。途中、西宮神社奥の院など島に祭られている3神の前で参詣。海上安全や防災を祈り、手を合わせた。釣り船「健勝丸」(3・1トン)の千葉健太郎船長(23)は「子どものころからなじみのある祭り。こういう場があると、地域も活気づく。漁業をはじめ海の仕事に携わる若い人を増やし、これからの唐丹を盛り上げていければ」と意を強くした。
湾内に祭られる神様の前で海上安全などを祈る「健勝丸」の千葉健太郎船長
漁船に乗せてもらい、笑顔を輝かせる子どもたち
各船には唐丹小、中の児童・生徒、教職員ら約30人も乗船。地元の海の豊かさ、家族を支える父親らの海上での雄姿を目の当たりにし、古里の素晴らしさを体感した。同実行委事務局の下村惠寿さん(71)は「なりわいの漁業を次世代に伝承していくためにも大きな意味を持つ。コロナ禍で昨年から各種行事が中止されてきたが、やっと唐丹が一つになれる場を作れた。住民の団結力の表れ」と喜んだ。
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