フルートがつなぐ絆強く 震災から10年の釜石で約束のコンサート


2021/07/02
釜石新聞NewS #文化・教育

県内外のプロ、アマチュア奏者で結成したフルートオーケストラ。小学5年生から70代までが集った

県内外のプロ、アマチュア奏者で結成したフルートオーケストラ。小学5年生から70代までが集った

 

 フルートがつなぐ約束~10年と100日コンサート~(同実行委主催)が6月19日、釜石市大町の市民ホールTETTOで開かれた。東日本大震災から10年を機に、県内外のフルート奏者がオーケストラを結成。次の10年を見据え、歩み始めた被災地に音楽の力で希望をもたらした。6月20日は北上市のさくらホールでも演奏した。

 

 同コンサートを発案したのは、花巻市在住のフルート奏者・牧野詩織さん(37)。子どものころから師事してきた釜石市の山﨑眞行さん(70)が2011年3月11日の同震災で被災。力になりたいと、同年6月18、19日、山﨑さんを招いたチャリティーコンサートを遠野、花巻両市で開催したことがきっかけだった。

 

 当時、コンサートが開かれたのは発災から100日目。「現地が落ち着いたら、もう一度コンサートをやろう」。10年後という目標を立てた牧野さん。4人で演奏したコンサートは10年の時を経て、牧野さんら県内のプロ奏者10人にアマチュア奏者などが加わった総勢約30人のオーケストラでよみがえった。

 

 山﨑さんのソロ、牧野さんと山﨑さんの2重奏などアンサンブルのステージに続き、音域の異なる大小さまざまなフルートを用いたオーケストラの演奏が披露された。注目は、この日が初演となった「それは不死鳥のごとく~2本のフルートとオーケストラの為の~」。作曲家岩岡一志さんが実行委から委嘱され、同コンサートのために書き下ろした作品で、震災犠牲者の慰霊、復興への畏敬の念、未来への願いなどが込められた。

 

岩岡一志さん作曲の「それは不死鳥のごとく」では山崎鮎子さん(釜石市)と大泉穂さん(久慈市)がソリストを務めた

岩岡一志さん作曲の「それは不死鳥のごとく」では山崎鮎子さん(釜石市)と大泉穂さん(久慈市)がソリストを務めた

 

 オーケストラは、岩岡さんが編曲した連作交響詩「我が祖国」第2曲モルダウ(スメタナ)も演奏。最後は復興支援ソング「花は咲く」で観客115人と心を通わせた。

 

 一関市の小山健一さん(66)は「フルートの音色で表現されたモルダウの世界観が素晴らしかった。震災10年目にして、こういう形でコンサートが聞けるのは感慨深い。釜石まで来たかいがありました」。オーケストラには高校生の孫小山颯矢君(17)が参加しており、「孫の成長も見られて良かった」と喜んだ。

 

 実行委はコンサート実現のためのクラウドファンディングも実施。釜石の特産品プレゼントを絡めた支援企画に213人が協力した。エンディングでは支援者からのメッセージを上映。アンコールの「ひょっこりひょうたん島」主題歌は、全国のリモート参加者の動画を背景に演奏した。

 

全国の支援者のリモート参加動画を上映しながら演奏した「ひょっこりひょうたん島」主題歌

全国の支援者のリモート参加動画を上映しながら演奏した「ひょっこりひょうたん島」主題歌

 

 牧野さんは「この10年で音楽仲間の輪が広がり、今回のコンサートにも多くの人たちが共感し参加してくれた。これを機に県内の子どもたちが音楽や芸術に触れられる場が増え、新たな可能性が開かれていけば」と願う。

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