井上マスさん「人生はガタゴト列車に乗って」釜石で今秋ミュージカルに
ミュージカル公演に向け始動したキャストら=12日
人気作家井上ひさしさんの母、井上マスさん(共に故人)が釜石での生活など波乱万丈の生涯をつづった自叙伝「人生は、ガタゴト列車に乗って…」が今秋、釜石市でミュージカルとしてよみがえる。市内のNPO法人ガバチョ・プロジェクト(山﨑眞行理事長)が劇団くろがね(平田裕彌会長)と共催し、10月31日、大町の市民ホールTETTOで上演する。同作はプロによる舞台化はあるが、市民手作りのミュージカルで公演するのは初めて。演劇と歌やダンスで繰り広げられる舞台に期待が高まる。
同NPOは、釜石とつながりの深い井上ファミリーの記念館建設などを目指し、2012年10月に設立。10年目に入るのを機に同公演を企画した。脚本を書いたのは山﨑理事長(70)。マスさんの著作を基に3幕(約2時間)の舞台に仕上げ、劇中歌も制作した。主題歌は釜石出身のシンガーソングライターあんべ光俊さんが手がける。
ミュージカルの脚本、音楽を手がけたガバチョ・プロジェクトの山﨑眞行理事長
井上マスさん(1907―91)は神奈川県小田原生まれ。東京で出会った夫と山形県の実家に駆け落ち同然に移り住み、人生が激変していく。病弱の夫は若くして他界。残された3人の息子(長男滋、次男ひさし、三男修佑)を女手1つで育てるため、あらゆる仕事に従事する。事業の失敗、愛する息子たちとの別れなど多くの辛苦も経験。戦後、たどり着いた釜石では、製鉄業や漁業で栄えるまちの勢いを背景に焼き鳥屋台を繁盛させ、多くの市民の記憶に残ることとなる。
晩年の井上マスさん(左)。次男ひさしさん(中)、長男滋さんと釜石の自宅で
母としてたくましく生きる姿、家族の絆、何事にも臆せず挑戦するバイタリティー。山﨑理事長は「幾多の困難を乗り越えてきたマスさんの人生は、震災復興と重なる部分がある。震災から10年を経た今、舞台を通してマスさんの勇気や努力、力強さを感じ、またここで『よし、頑張るぞ』と元気を出してもらえたら」と願う。
キャストは子どもと大人合わせ15人ほど。市内の合唱3団体がコーラスで協力する。オーケストラはムジカ・プロムナード(東京都)と釜石市民吹奏楽団有志約30人で結成予定。山﨑理事長が作った曲のほか、時代を象徴する流行歌などを織り交ぜながら舞台が進行する。
劇中場面のイメージを伝える山﨑理事長
キャストは6月5日から始動。演劇初挑戦の鹿内翔英君(釜石高1年)は「マスさんのことは初めて知った。昔の釜石を知る機会にもなる。役柄を理解し、物語の世界に入り込めるよう全力で頑張りたい」と意気込む。演出は震災後、仲間と劇団を立ち上げ活動する小笠原景子さん(37)。「歌あり生オケありで、いろいろな面白さを感じてもらえると思う。出演者に舞台の楽しさを知ってもらい、観客にも伝えられたら」。配役は7月上旬に決定する予定。
公演、キャストの問い合わせは同NPO(電話0193・55・4471)へ。
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